2014年3月29日土曜日

第6部:結びに:次に来るものは何か?

21世紀の二項対立原理は右か左かではない、開かれた社会かそうでないかなのだ。
—アレック J ロス

本書にも示されているとおり、オープン・データ・ムーブメント初期にデータは確かに、新しい政策ポリシーを定めたり、新ビジネスの機会を創出したり、行政サービス提供方法を最適化したりするために重要な役割を果たすでしょう。アシュビルから始まり、ポートランド、シカゴ、そしてロンドンまでの都市はオープン・データを開放することで地方レベルから国家レベルにいたるまで数十億ドル規模の経済活動を触発し、メリーランド州の児童福祉政策やルイビルの公共事業のような市民サービスの中心となる事業はデータに基づき常に革新されています。このような行政による戦術的強化を超えて、市民の行政に対する信頼の増加とさらなる行政参加という文化的、社会的シフトが発生しています。

しかし、いまだにオープン・データ・ムーブメントに対する古い考え方が残っているとみられます。長い目で見た現在の努力の成功は単に今の効率性ではかられるだけではなく、より難しい論点や新しい問題にたいする未来の行動を促進する能力によってはかられるべきです。個人データやプラットフォームの統合、部署間の調整など難しい分野から進歩が始まったとはいえ、われわれはまだほんの表面をひっかいているだけなのです。オープン・データが主流になるにつれ、政治的、哲学的問題が前面に出てきています。われわれはいかに社会的包括をデザインするのか?プライバシーとオープン性の両立はどうするのか?われわれはこのような問題に次は対処していかねばなりません。

このような問題に対処し未来の機会を実現するため、事例からの学びを心に留める必要があります。データはあくまでも道具-それも時にはなまくらなーものです。道具は使い手により初めて役に立つものとなります。オープン・データ・ムーブメントは透明性を最終目的するのではなく、ひとりひとりの選挙民がデータの使い手となることを意味するのです。”いかにオープン・データをすすめるか”は行政だけへの問いではなく、また”データを利用して何を構築するか”も市民向け起業家だけへの問いというわけではありません。ニューヨーク市はデータ解析を行うとても印象的なアプリケーションの開発を始めました、一方、ブライトスコープ社は数百万行のデータをオープンにしてきました。スマートシカゴ協働プロジェクトや、フィラデルフィア市の最高情報責任者、そしてスマート購買プロジェクトでもデータを使い政策ポリシーの変更を進めました。市民ハッカーとジャーナリストはデータを利用可能にし、より意味のあるものにするために重要な役割を果たしてきました。

詳細な部分は本書に載っていますが、予期もしなかった市民によるオープン・データの使い手がわれわれの社会の全ての分野から生まれてくる数え切れないほどの事例が他にもあります。このように、オープン・データはわれわれの持つ公共と個人の線引きをぼやかすようになり、消費者、市民、公務員をふたたび結びつけています。未来を見つめると、このことはオープン・データの偉大な伝統の一部となるかもしれません。新しい種類の結合された組織の台頭が21世紀に適応した人民の人民による政府を築き上げることを可能にするのです。
### 著者について

アビ・ネマニはCode for America(CfA)の(暫定)共同執行役員です。ほぼ4年にわたってアビはCfAの戦術的開発および発展を率いており、いくつもの新規プログラム(まったく新しい市民起業家向け援助プログラムや都市どおしの協業を助けるCfA ピアネットワーク)の開発をしています。アビは世界中のカンファレンスや種々の大学、世界銀行や、SxSWでのスピーカーとして講演も行っています。彼はクレアモント・マッケンナ・カレッジで哲学、政治学、経済学の学位を取得、優等で卒業しています。

(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))

第22章:オープンデータとアルゴリズム規制 - ティム・オーライリー

ティム・オライリー Founder and CEO of O’Reilly Media.

規制は今日の政治の悩みの種だ。ほとんどの分野において多すぎるほどの規制があり、逆に規制が少なすぎる分野もある。しかし、ほとんどの場合、それらは間違ったものであり、紙に書いたルールの山や非効率なプロセスなのだ。そして避けえない予期しなかった結果を導くとわかってもほとんどそのルールやプロセスは調整できないのだ。

しばらくの間、規制(制御)をもっと大きな観点から見てみよう。自動車の電子制御部品は排ガスを減少し最適な燃費効率を追及するためにエンジン内の空燃比を規制している。航空機のオートパイロットは数え切れないほどの要素を制御しながら、飛行を維持し正しい目的地に誘導する。クレジットカード会社は詐欺を防いだり、利用者の使用限度を守らせるため利用記録を監視し規制している。医師は患者に出した薬品の用法を時にはある程度の範囲で、時にはかなり正確に規制している。

例えば通常の細胞には影響を与えることなくガン細胞だけを殺す抗がん剤治療だったり、生体機能を維持しながらも手術中には意識を回復しないようにする麻酔の適応などである。プロバイダーや企業のメールシステムは最大限の能力をもってスパムメールやウィルスを含んだメールがユーザーには届かないように規制をしている。検索エンジンは検索結果と広告を規制し、ユーザーがもっとも見たかった結果を出すようにベストをつくしている。 これらの規制のかたちは何を共通点に持つだろうか?

1.望ましい結果に対する深い理解
2.その結果が実現されているかを決めるためのリアルタイムでの測定
3.新しいデータに基づいて調整を行うアルゴリズム(つまり、ルールの集まり)
4.アルゴリズム自体が正しく予期したとおりの結果を出すことが出来ているかの定期的かつ深い検討

上で見たような共通点にそって規制を行っている自治体および特殊法人はほとんど、本当に少ししかありません。たぶんもっとも良い例としては中央銀行が利率、インフレなど経済全般の状態を制御するために行う通貨供給量規制があげられます。アメリカ連邦準備委員会が通貨供給量をいろいろなタイミングと率でひきしめたりゆるめたりすることについて個々のグループの意見はあるにせよ、驚くべきことにほとんどの人たちはこの種の規制の必要性を受け入れています。

それはなぜなのでしょうか?
1.望ましい結果がはっきりしている。
2.全ての人にとって公開されたデータに基づいて、その結果が達成されたかどうか判断するための特殊でない測定手段とレポートが存在する。
3.望ましい結果が出なかったときに調整が行われる。

これを通常の規制モデルと比較してみると、それは結果よりもルール自体に目が行っているのです。すでに意味がなくなったルールにこれまでどれほど直面したことがあるでしょう。ルールに望ましい結果を実際にもたらす証拠があることがどれくらいあるでしょうか? その”ルール”とやらが実際はルールですらない場合もあるのです。ホノルル市の前CIOであるゴードン・ブルースが民間から行政に入り、やり方を変えていこうとしたときに直面したことを語ってくれました。

まず、こう言われたそうです。「それは法律に反しています」そこで彼はこう返しました。「OK。ではその法律を見せてくれますか。」「あ~、正確に言うとそれは法ではないのです。規制なんです。」「OK。ではその規制を見せてくれますか。」「あ~、正確に言うとそれは規制でもないんです。20年前にある人が決めた方針なんです。」「なるほど、じゃぁそれは変更できますね。」 しかし、しばしば実際には長い間生きのびてしまう法律や規制があり、その人工的なシステムは長期間たちすぎた結果、変更することができなくなります。

この問題に対処するためオバマ政権では不必要な規制を抹消する”規制確認”制度と規制の効果をはかる方向に注力してきています。(ホワイトハウス 2012) しかし、この種の規制改革がじゅうぶんに行われることはありません。アメリカ合衆国の法律は驚くほど複雑になってしまいました。直近の保健改革法案はほとんど2000ページにもおよびます。

対して合衆国憲法は200年にわたるぶんの修正を含んでもわずか21ページです。全米の都市間を結ぶ高速道路建設、歴史上もっとも大きな公共事業ですが、これを計画した1956年の高速道路法案は29ページしかありませんでした。 法律は目的、権利、成果、権限および制限を定めるべきです。それがあいまいだったとき、それらの法律は時の試練に耐えるのです。

規制は法律をどのように実行するかをより細かく規定するものですが、それはプログラマーがコードとアルゴリズムを扱うのとまったく同じように扱われるべきで、つまり法で定められた成果を達成するために常に更新されなければいけません。 ますます今日の世界では、この種のアルゴリズム規制はたんなるたとえ話ではなくなってきました。金融市場を考えてみましょう。電子のスピードで行われる決済を行うアルゴリズムが実装され、新しい金融機関が毎日考案されています。これらの金融機関を彼らと同じやり方で監視し管理するアルゴリズムやプログラムなしでどうやって規制していくのでしょうか。あたかもGoogleの検索品質を保つ、Googleの”規制”アルゴリズムがスパマーや悪徳検索エンジン最適化エキスパートとのゲームに勝利しているようにです。 大銀行による悪行の暴露に告ぐ暴露は定期的な法的な検査だけではじゅうぶんではないことを示しています。システム的悪事にはシステム的規制が必要なのです。行政はビッグデータの時代に入る時です。アルゴリズム規制の時は来たのです。

### オープンデータとプラットフォームとしての政府

政府は多くの分野で規制をすることをやめ、それを”市場”に任せるべきだという人が居ます。しかし、積極的な管理がなければそのすきに悪事を働く輩が多数出るでしょう。GoogleやMicrosoft、AppleやAmazonのような会社が彼らのプラットフォームを管理するメカニズムを構築したように、政府もわれわれ社会の成功を確かにするプラットフォームとして存在し、そのプラットフォームでは適切な規制が必要なのです。

現時点で、SEC(証券監視委員会)のような機関が時代に適応できていないことは明らかです。バーニー・マドフとアレン・スタンフォードの大型投資詐欺事件を受けて、現在SECは同種の投資手法を使っている業者の中でずば抜けた成績を残す、つまり詐欺の可能性が高いヘッジファンドを見出すアルゴリズムモデルを構築しました。しかし検出しても検査では長い時間の調査と交渉に入り、それぞれ個別の対応が必要になります。いっぽうGoogleが検索結果に問題を引き起こす新しいスパムをアルゴリズム的手法で見出した場合は、すぐにルールを変更してその悪要素の影響に制限を加えるようにします。我々は無計画な検査を前提としたものより、システム的に悪事に対応する他のより良い方法を見出さなければなりません。 そのためには法律や規制が、そのプロセスよりも望ましい結果自体に注目するようにならないと可能になりません。 SECの規制について他にもやるべき点があります。金融規制は規制当局から指示された内容を簡単に分析できるフォーマットで金融機関が発表する情報開示によっています。このデータは規制当局に利用されるだけでなく、民間でも独自にその金融機関の健全性評価や発展性、他の意思決定に使われます。規制当局者が情報を、実際にはオープンデータを要求することがいかに市場に透明性を与え自己浄化作用をひきおこすかということを見ることができるでしょう。 またここで政府と市場にデータが公開される方法の近代化が規制結果を改善するのに重要な役割を果たしていることを見ることもできます。データは適切なタイミングで、機械可読かつ完全なものとして提供されなければなりません。(オープンガヴァメントワーキンググループ2007を参照)報告が紙で行われたり、PDFのような扱いにくいデジタル情報として提供されたり、四半期に一度のみの発表であったりすると、それはほとんど役に立ちません。 データが再利用可能なデジタルフォーマットで提供された場合、民間側で消費者や市民に価値を提供する新しいサービスを創出したり同様に問題を見つけだすのに役立ったりします。これはアメリカ財務省の”スマート情報開示”イニシアチブの目的です。 ( http://www.data.gov/consumer/page/consumer-about を参照) また新しい金融商品特化消費者庁の主目的でもあります。 行政の規制担当者が情報開示に注力したとき、民間企業はそれに基づいた消費者向けサービスを構築し、真に重要な犯罪者を取り締まる時間を増やすことができます。 ### 規制と評価が出会うとき "ほとんど統治しない政府がもっとも良い政府である”は真実である。しかし、”ほとんど統治しない”ことの秘訣は社会としてわれわれが気にかける不可欠な部分をはっきりさせること、つまり安全な社会、健康な生活、公平性、機会の提供、これらを法律内に体現し、その実現に向かってわれわれを導く規制システムを常に改善し続けることである。 新技術により規制の量を減らすことを可能にしながら、いっぽうで実際には望む結果の生成と監視の量を増やすことができるという面白い時代にわれわれは直面している。 タクシーの規制を考えてみよう。表面上タクシー規制はその時間帯に必要な適切台数のタクシーが走るように行われていて、同時に利用者の安全と品質を保つためとされている。ただ実際には、われわれも知ってのとおりこの規制は品質や利用可能性についてよくない働きしかしない。UberとHailoのような新サービスは既存の免許ドライバーで運用されているが、ドライバーと利用者をひきあわせるためスマートフォンの地理情報を利用し、ほとんど利用されないような場所でも利用可能性を向上させている。しかし、規制に関する話の中で同様に重要なのは、サービス側で利用者がドライバーを(そして、ドライバーが利用者を)格付けするよう求めることである。品質の良くないサービスを提供するドライバーは消えていく。これらのサービス利用者が保証することで、素晴らしい利用者体験を生むことについては評価システムのほうが政府の規制がどれほどあろうとも、それよりも良い働きをしているのだ。 RelayRidesやLyft、Sidecarなどの相互自家用車利用サービスは、レンタカー規制にかかることなく、利用者が互いに車をシェアできるようにしています。このサービス上では相互評価が規制の代わりに利用され、そのことによる悪影響もみられません。行政はこのようなモデルを排除するのではなく学び、明白な悪影響がない場合は採用するべきです。 AirBnBのようなサービスは似たような相互評価システムを提供しており、許認可行政のもとではほとんど格付けを得られないような近隣の宿泊サービスを利用可能にしながらも、顧客保護を実現しています。 相互評価システムはオープンデータにより規制担当者および当局者が無理することなしに市民にとっての結果をいかに改善するかのとても良い例です。 Yelpのようなサイトはレストランについて多数の口コミ評価を提供します。美味しくない食事やダメなサービスを受けた不幸なユーザーは非難し、一方、素晴らしい点は評価されます。 ユーザーの相互評価システムの持つ使いやすさと広がりを政府のデータとあわせようとする興味深く新しいプロジェクトがいくつもあります。最近の試みの一つにサンフランシスコ市とCode for America、Yelpが共同して策定したLIVES標準があり、保険局の検査データをYelpや他のユーザー向けレストランアプリケーションで利用できるようにしました。オープンデータを使い、より豊富な情報を消費者に届けるようにしたものです。House Facts標準は同じように家屋調査データを用いて、Truliaのようなネットサービスと統合しました。 他に興味深いプロジェクトと言えば、もともとカリフォルニア消防当局のサン・ラモンによって始められたパルスポイント プロジェクトがあります。これは行政データを市民向けアプリケーションと結びつけることで、(たんなる市民の声ではなく)市民の助けを実際に得るものです。あるレストランで消防隊のリーダーが救急スタッフと共に昼食を取っている際、隣のレストランから救急出動依頼が出ているのを聞き狼狽したという経験から作られたアプリケーションで、救命救急トレーニングを受けた市民なら誰でも公式に出動依頼を受けることができます。 ### アルゴリズム規制でのセンサーの役割 ビジネスや行政との関わり、形成される環境自体がますますデジタル化しており、そのため独創的な形で測定可能となり、究極的にはアルゴリズム規制を受け入れるようになります。 例として、(オービスのような自動撮影システムではなく)GPSの利用により速度超過をしたドライバーがたまたまそこにいた警察官に切符を切られる代わりに、自動的に取り締まられるような未来を考えるのは容易です。 今日ほとんどの人はそれを押しつけがましく、異様なものだと考えるかもしれません。しかし、未来には今日定められているような固定された速度制限ではなく、交通量や天候、その他客観的条件により速くしたり遅くしたり適切な速度制限が自動的に調整されるようになることが想像できます。最終段階では自律した自動車が今日の固定した速度制限よりも安全に保つ規制システムによる見えないWebに接続されてより速く移動することが可能になります。結局のところ目標は自動車をもともとの速度よりも遅くすることではなく、道路を安全にすることなのです。 このような未来はおそらく多数の問題を提起し、プライバシーや他の基本的自由に対する攻撃であると多くの人がみなすかもしれないとは言え、シンガポールのような国ではすでに初期的なものが導入されており、さらに広がっていくことが予期されます。 市中心部への交通量を抑制するために設けられた渋滞税の価格設定はもうひとつの例です。ロンドンで行われているようにナンバープレートを読みとって料金を後ほど支払うシステムは自動課金に代わります。これにより価格に時間帯別だけではなく実際の交通量を反映させることができます。 スマート駐車メーターは似たような機能を持っています。ピークの時間帯に駐車すると料金は高く、そうでなければ安くなります。しかし、たぶんより重要なのは、スマート駐車メーターが駐車されているかどうかをレポートする機能を持つことで、結果的にドライバーやカーナビシステムに情報を与え、空いている駐車場を見つけるために目標無しにぐるぐると回る無駄な時間を減らすことにあります。 将来的に電気自動車が増加することが想定されるため、すでにガソリン税ではなく代わりに移動距離税を課すべきだという要請があります。もちろん、GPSによって記録されたデータをもとにします。 さらに未来においては、公共交通機関が再発明され、ますますUberのようになっていくのを想像できるでしょう。1人の利用者と1人のドライバーを結びつけることと、同じルートもしくは同じ目的地に向かう4,5人の同乗者を探すことの差はほとんどありません。スマートフォンのGPSと賢い経路探索アルゴリズムがあれば、より多くの利用者を結びつけるコストがかからず柔軟な公共交通機関として、タクシーとバスを統合したようなサービスが実現するでしょう。 ### 最初のステップは測定 データによる規制システムはGoogleやクレジットカード会社で行われている、もしくはそれ以上に複雑なものである必要はありません。時として、すでに収集されたデータから計算される単純なものであり、新しいビジネスプロセスがそこで実行できるものです。 一例として、退役軍人用の小自治体向け求職検索エンジンの費用(年間5億円)を聞いたあとで、サイトには何人の利用者が居るのかを尋ねたのです。「数百人です」と言われました。はっきりとわかるほどの衝撃を受け、なぜこのようなプロジェクトが契約更新されるのかと思いました。しかし、総務のお偉いさんに政府のウェブサイトで利用者1人あたりの費用を定期的に計算するプロセスがあるのかを確認したところ、「それは良い考えですね」って言われたんです。これは単なる良い考えであってはいけないです。常識とされるべきなんです。 民間のウェブサイトではトラフィックを測定するだけではなく、常に利用されなくなった機能をなくしたり、新機能のテストを行うなどの調整を続けています。起業したばかりの会社が目的とする顧客を獲得するのに失敗したとき、その企業を支援するベンチャー投資家は投資資金を引き上げるか、もしくは新しいやり方に"変更"させて成功するまでいろいろな方法を試させます。現在シリコンバレーで広く普及する"リーンスタートアップ"という考え方では起業したばかりの企業を"学習機械"であるとみなして、市場に対する対応をデータに基づき継続的に改良、改善していきます。一方、行政ではあたかも失敗することが大罪であるかのように、やむを得ず下手なやり方に倍賭けしているように見えます。 政府のウェブサイト契約更新時に、ページ評価データを利用することはアルゴリズム規制の簡単な利用のひとつですが、膨大なウェブサイト自体の簡素化とITコストの削減につなげることができます。民間のホームページで他に利用されている評価データとしては、滞在時間や離脱率[フォーム書込や製品購入中に完了せず訪問者が立ち去ってしまう率]、必要な情報にどの経路でたどりついているかの分析があります。 他のデータも同様に利用可能です。多くの民間サイトでは検索キーワードを分析することにより顧客が何を求めているのかを浮かびあがらせます。英国政府デジタルサービスではこの手法を、あまたある省庁や内閣官房が自分たちの成果を自慢させるためではなく、ユーザーのニーズにそってGov.UKのサイトを設計しなおすときに利用しました。人々が何を探しているかを確認し、もっとも検索される答えに対し新しく短い経路でたどりつけるようにサイトを設計しなおしたのです。(Code for Americaはホノルル市のサイト、Honolulu Answersをほとんど同じやり方で構築しました。さらにもっとも問い合わせの多い質問に対しては市民によ、りより親しみ深い内容の答えを”ライトソン”を開催することで作成しています。) これはGoogleがアルゴリズムを使って検索問合せデータを検討しどの結果を表示すべきか評価する際に自動的に行っているやり方を真似る、より単純な手動での改善方法になります。例えば、Google は彼らが"長時間クリック"および"短時間クリック"と呼ぶものを測定しています。ユーザーが検索結果リンクをクリックして検索結果のページに戻らない、もしくはそうとう後になって戻れば、それは目的のページが役に立ったことを意味します。これが長時間クリックです。これに対して短時間クリックは、すぐに検索結果のページに戻り、代わりに他のリンクをクリックします。短時間クリックが多いリンクは、検索結果のページで順位が下げられます。 データ収集、評価、分析、意思決定が政府内で確立しつつあるという多数の良い事例があります。ニューヨーク市では集合住宅の違法改築と火災の危険性増加の関係をデータマイニングから特定し、建築局と消防検査部門とのユニークな協力関係につなげています。ケンタッキー州のルイビルでは実績評価に注力している部署が行政の文化を継続的プロセス改善へと変えています。 このような手動での改善はあくまでも本質的な最初の一歩であることを理解することが重要です。システムで役に立つデータが収集できて、そのデータに基づいた改善が効果を発揮することがわかれば、次はそれを自動的に実行することを検討することになります。

まだ長い道のりがあります。評価、結果、そして規制がいかに両立していくかを考え始めたばかりなのです。 ### アルゴリズム規制のリスク アルゴリズム規制の利用は規制側の権力を増大し、時にはそれが濫用につながったり、我々の自由な社会に対する呪いともよべる状態になってしまう可能性があります。"目的の自己拡大"は本当に危険です。ひとたびある目的にそってデータが集められると、データが別の目的に利用されてしまうことは簡単に想像できます。本来、海外でのテロ活動防止のためにNSAが集めていたアメリカ人の情報が、著作権侵害を含む国内犯罪のために他政府機関により利用されていたということを我々は既に経験しました。 このような危険性を避ける答えはデータを収集しないことではありません。本来の目的以外に使われることのないようにしっかりとした安全策を講じていくことなのです。これまで見てきたように、監視と透明性を執行するのは、国家安全保障が問題だったり、不正使用を隠すためにセキュリティを隠れ蓑にされたときは特に難しくなります。しかし、NSAだけがその手法を秘密にしている組織というわけではありません。Googleの持つ検索アルゴリズムの詳細点の多くはシステムで悪用されないため、どのように動作するかがビジネス上の秘密とされています。同じことがクレジットカード詐欺検出にも言えます。

ひとつの大切な違いはGoogleのような検索エンジンがオープンデータ(Web上にあるコンテンツ)に基づいていて、競争にさらされているということです。もし、Googleの検索結果が悪いもの(例えば広告収入を増すために恣意的な結果を表示する)であれば、市場シェアをBingに奪われるというリスクが高まります。ユーザーはまた自分自身でGoogleの検索結果を評価できるのです。 それだけではなく、Google の検索品質チームはユーザー自身に依存しているのです。数万の検索を実行した人達に必要としていた結果が見つかったかどうかを尋ねるのです。"いいえ"がある程度多い場合、Google はアルゴリズムを変更します。 可能であるときは、アルゴリズム規制を採用している行政は同様にその規制の品質評価手段を持たなくてはなりません。それは定められた法に準拠していることを示すだけだけでなく、規制が意図していたもともとの明確な目標に合致している事を強調するためです。意思決定に使われるデータは監査可能で、可能であればいつでも公共的に検査できるようオープンであるべきです。 真のアルゴリズム規制システムを構築する際に必要とされるデータ収集には巨大なプライバシー侵害のリスクもあります。運転中の速度記録は移動場所の特定につながります。しかし、速度超過をしない限り場所データを保存する必要はなく、また交通制御システムで利用する際にはデータの匿名化が可能です。 民間側でかなりの量のデータ収集が行われれば、現在のプライバシーが持つ意味が変わっていくことははっきりしています。必要なことはデータ収集とその利用により受ける利益との間のトレードオフを熱心に議論することです。 このことは政府という文脈でも変わらないのです。 ### 結びに われわれは社会全ての要素に影響するビッグデータによるアルゴリズム規制のまだ始まりに立ち会っているにすぎません。政府はこの革命に参加する必要があるのです。 導入部分でもふれたように、成功するアルゴリズム規制のシステムは以下のような特徴を持っています。

1.望ましい結果に対する深い理解
2.その結果が実現されているかを決めるためのリアルタイムでの測定
3.新しいデータに基づいて調整を行うアルゴリズム(つまり、ルールの集まり)
4.アルゴリズム自体が正しく予期したとおりの結果を出すことが出来ているかの定期的かつ深い検討

オープンデータはステップ2とステップ4で重要な役割を果たします。オープンデータ、それが政府自体から提供されたものでも、また民間に政府から要求されたもののいずれでも、評価の革命に重要な役割を持つのです。オープンデータはまたわれわれが望んだ結果にいたっているのかどうかを理解することを助け、より良い方法で目的にたどりつくために競争を潜在的に促進するのです。

### 著者について ティム・オライリーは世界中で多くの人が最も素晴らしいコンピュータ関連書籍出版社であると考えるオライリーメディアの創業者でありCEOです。オライリーメディアはまた技術系のカンファレンスを開催しており、オライリーオープンソースコンベンションやStrata:データビジネスなどを含む多数の会議を行っています。ティムのブログ、オライリーレーダーは、”業界最先端の技術者に注目”して今後やってくる技術トレンドを見たり、技術者コミュニティにとって重要な問題のプラットフォームとして提供されています。ティムはまたオライリーの初期ステージベンチャー養成会社であるオライリーアルファテックベンチャーズの共同経営者であり、サファリブックスオンライン、PeerJ、Code for Americaそして最近オライリーメディアから分社したメイカーメディアの取締役でもあります。メイカーメディアの主催するメイカーフェアはパーソナルコンピューター革命を引き起こした西海岸コンピュータフェアになぞらえられています。

### 参考資料 * [Lichtblau, E., & Schmidt, M.S. (2013, August 3). Other Agencies Clamor for Data N.S.A. Compiles. The New York Times. Retrieved from http://www.nytimes.com/2013/08/04/us/other-agencies-clamor-for-data-nsa-compiles.html](http://www.nytimes.com/2013/08/04/us/other-agencies-clamor-for-data-nsa-compiles.html) * [Open Government Working Group. (2007, December 8). 8 Principles of Open Government Data. Retrieved from http://www.opengovdata.org/home/8principles](http://www.opengovdata.org/home/8principles) * [ホワイトハウス (2012). 演説原稿: 規制 : 過去を振り返り未来へ目を向ける - Cass R. Sunstein. 以下参照 http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/inforeg/speeches/regulation-looking-backward-looking-forward-05102012.pdf ](http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/inforeg/speeches/regulation-looking-backward-looking-forward-05102012.pdf )


(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))

5_21_Philly_Open_Data

5_20_GOVUK_Bigger_Picture

--- layout: chapter BIgger Picture: これからのオープン・ガバメントに関する10の教訓 chapter: 20 第5部 author: - 名前: John Bracken twitter: jsb 仕事:メディア・イノベーション部長 所属:ナイト財団 photo_url: /images/authors/bracken.png John S. Bracken はナイト財団のメディア・イノベーション部長。彼はナイト・ニュース・チャレンジ、ナイト・プロトタイプ・ファンド、ジャーナリズムプログラム、技術投資プログラムの監督をしている。 permalink: /part-5/the-bigger-picture-ten-lessons-for-taking-open-government-further/ --- ナイト財団における私の仕事は有望なアイデア持つ人々を見つけ、彼らを助け、それらを実行することであった。これらの活動を行う我々の重要なツールが、過去6年間超で3000万ドルを越える資金を提供し、100近いプロジェクトを支援してきたナイト・ニュース・チャレンジという助成金プログラムである。我々はローカルWiKi、オープン・ナレッジ・ファンデーション、ウシャヒディ、エブリ・ブロック、オープン・ストリート・マップ等の、幾つかのオープンガバメントに関連するプロジェクトやグループをしてきている。 ニュース・チャレンジで支援してきたプログラム、見識、才能のネットワークは、我々をオープン・ガバメントにける最近の?iteration?に集中させてきていた。我々のゴールはオープン・ガバメントに関係する人々の裾野を広げることであった。実践的なオープン・ガバメントのアプリケーションに加えて、住民と政府の関わり方がインターネットによってどのように変えられるのかというアイデアを明らかにしたいということを望んでいた。より多くの人々を技術によるコミュニティの問題解決に巻き込み、サンフランシスコ、シカゴ、そしてボストン-ニューヨーク-ワシントンDCを結ぶ地域にあるオープン・ガバメントの標準となったような都市以外にも展開していきたいと考えていた。?それらの都市のひとオープン・ガバメントのムーブメントの一部として自分自身を考えて? 応募期間の間、我々は14都市でイベントを行う為に地域で活動している組織とパートナーシップを結んだ。それら14都市は、ケンタッキー州レキシントン、ジョージア州マーコン、カリフォルニア州サンディエゴ、ミネソタ州セント・ポール等のあまりオープン・ガバメントになじみの無いような都市であった。提出された860件の応募中の、いくつかのテーマはオープン・ガバメントの思想を捉えたものであった。これらは以下のような要素を含んでいた、 ● 政策策定における住民の直接参加 ● データの透明性に関する政策の強化 ● 複数のデータセットからの理由付け ● 政府の支出と?campaign contributions?の理解 ● 公有地及び空き地の有効利用 コンテストの過程と提案の分析をした結果、オープン・ガバメントは市民のニーズに取り組む実践的なツール及びアプローチよりも、より挑戦的なアイデアを作り出すという評価結果を導き出した。我々は、オープン・ガバメントになじみの無い都市において、多くのリーダ的な住民、行政官、ハッカーと対話を行った。私自身は、オープン・ソース・プロジェクトとの安全性と持続性に懐疑的な自治体政府の高官、住民のデータに対する要望に関心のある議員、自治体政府の「公開性」に対して懐疑的なジャーナリストとたちと意見を交わした。 我々の評議員は最終的に8つのプロジェクトを承認した。8つのプロジェクトは、既に自分たちのアイデアを試みており、どの部分が機能して、どの部分が機能しないかを説明することができた。また、彼れらの提案はオープン・ガバメント的なものであった。(全く新しい分野を支援しやいという私の希望は失敗に終わった) 基本的には、8つの選ばれたプロジェクトは挑戦的なものというよりは、実践的なもので、住民や政府のニーズに取り組むというものである。我々が強く奨励したにもかかわらず、最終選考に選ばれたプロジェクトのうち少しにしか、インターネット時代における民主主義を再考を思わせるものはなかった。それらの多くは、住民及び消費者が、起業、空き地の再利用、政府へのビジネスの提供等をより簡単できるようにするのに実践的なツールを開発すといったものであった。コミュニティの再生、民主主義の最高等に彼らは住民を巻き込もうとは思っていない。これは、ナイト財団、財団に助言をしてくれた開発者、支援者、ジャーナリスト等のバイアスの係った意見を反映しているのかもしれない、しかしながら、野心によって導かれるオープン・ガバメントの発展の過程でその動きが現時点でどの位置にあるかを示しているということでもある。その価値は、実践的なビジネスや行政サービスにおかれているのである。 挑戦的なものから実践的なものへの確固な動きのガイド、我々はケビン・コスナーに注意を払ってみてもいいかもしれない。1980年代と1990年代の初め、コスナーはハリウッドにおける大スターの一人であった。彼のキャリアの頂点で、コスナーはフィールド・オブ・ドリームス(1989年スポーツ男子の泣けるファンタジードラマ)で主役を演じた。実態の分らない声に導かれ、コスナー演じる主人公は、1919年のシカゴ・ホワイトソックスに所属していた幽霊の為に、彼のトウモロコシ畑を耕し、野球のグラウンドに変えてしまう。「もし、おまえがそれを作ったら、彼はやってくるだろう」と謎の声は彼に約束していた。 「もし、おまえがそれを作ったら、彼はやってくるだろう」はここ数年のオープン・ガバメントの推進の雰囲気である。他の社会的な運動が始まる前と同様に、オープン・ガバメントもどのようなものになるのだろうかという夢に推されているのである。人々が必要としているものがなんであるかということの証拠を集め分析したものではないのである。我々のデータを公開することによって、仲間である住民が何かを成し遂げ、政府がより効率化し、そのことによって我々がよりよい生活を送ることができるという信念に基づいて運動が起きているのである。これらの理想的な成果がでてこなければ、必然的に、我々は失望し、技術、資金、時間、参加する気持ち等が我々の多くの友人たちには足りなかったのだと認識するのである。engagement の我々の情熱が、初まったばかりの社会的なプロジェクトの状況のような現実よりも先走っているのである。オープン・ガバメントは青年期に入ってきたのではないか、もっとも、我々がイノベーターと最終的なユーザーである住民との間のギャップに橋を架けないといけないのであるが。 この飛躍を成し遂げる上で、我々はケビン・コスナーの後期の映画「ポストマン」を参考にしたい。「ポストマン」はデビッド・ブリンの1985年発表の世界の終末後を描いたファンタジー小説を元に作成されており、映画の中でコスナーは死んだ郵便配達人のIDを持ち、制服を着た放浪者の役を演じている。コスナーは放浪しているうちに、何の気なくしたホラ話から無くなってしまったアメリカ政府(郵便事業)の代わりのような存在になってしまった。コスナーの断絶された町々に郵便を配布する行動や制服は、彼の訪れた人々の間に市民精神を再燃させた。(映画は面白くないが、ブリンの小説は非常に興味深い) オープン・ガバメントは、夢のフィールドを作ることから郵便配達へ、どのように移行すれんばいいのだろうか。我々は、どのようにアイオワのトウモロコシ畑で野球場を作ることを止め、街から街へ移動し、ドアをノックし、リンクと一つのコミュニティを同時に作ることができるのだろうか。我々はthe vision of it all down、便利なツールを組み立てる実用性へシフトする時期である。以下に、夢から実践に移る為の10の優先事項を列挙してみた。 現実的な期待 我々は、ベンチャー ・ キャピタ リストたちの巨大な事業だけでなく、顧客に価値をもたらすことのできる、プロジェクトやビジネスを構築する方法を学習する必要がある。Civic technologyは、投資に対する巨大なリターンを生み出す企業をつくることはできない。そのことを了解した上で、現実的で、持続的な起業家のビジョンを可能にするサポート、資金支援のサービスを構築する必要がある。 喜び 選挙、税、または地方自治体の予算についての情報を提供するために郵便屋さんを窓のところで興奮して待つ人などいません。愛する人からのメッセージ、雑誌の物語、ホリデー カードのようなものが、興奮して待つものだと思う。我々の作り出すアプリケーション・ツールも楽しいものであり、宿題のように感じるもので無いようにする必要がある。 ドラマ カリフォルニア知事ジェリー・ブラウンは「我々 は 2,000の 法案をもっているが、数も少なく、小さな法案でしかない」と今年初めに述べた。「小さな法案では世界を動かすことはできない。人々を鼓舞することができないのである 。ドラマが必要があり、その主役と敵対者。我々はここ歴史の舞台で「市民データを活用し、そして物語、映像、文化の中にいる隣人にそれを提示できるような良い仕事をする必要がある。 能力 手紙に感謝する為には読み書きができることが必要である。市民がオープン・ガバメントから利益を得、あるいは貢献する技術ややり方が何であるのか、どのように我々をそれらを見つけ、作り上げていくのか。 調査 何が機能して、機能しなかったかのベースラインは何か。どのようにやっているのか、より良くすることは何なのかを我々はどのように知るのか。何を計るのか。How do we know whether what we’re doing works, この事に関して我々はどのように他者に自慢できるのか。どのように政府や投資家に、投資利益率を証明するか。我々がこれらの質問に対する答えを持っていない事実、この遅れがやっかいなのである。 モデル 人々がオープン・ガバメントを実施する方法を問い合わてきたとき、我々は彼らにどこを指し示すことができるのか。我々は実例による確固たる、分り易い成功事例を示す必要がある。 才能 政府がオープン・ガバメントに必要な人材を雇いたいときに、政府はどこにいけばいいのだろうか。Code for Americaのフェローシップのようなプログラムは、非常に良いスタートポイントだろう、しかしそれらは人的資源を作り出すといったレベルには達していない。聡明なリーダーの束は持っている、しかしmost of them could fit into one conference。我々は彼らの経験やネットワークを失わないためにも、彼らが政府を去った後の位場所を作り出す必要がある。 ### 専門性の開発 政府で働いている多くの人々は、変化の仕掛け人になったり、イノベーションの推進人になったりはしない。彼らは、条件の良く安定的だから公務員になったのである。専門性のある政府職員や市民は、徹底的にオープン・ガバメントの動きを促進するようなスキルを、どこに磨きに行けばいいのだろうか。 リーダーシップの変化 我々は、変化を生み出すために、多くのことを政府のリーダー個人の方にのっけている。我々は、チーフ・エグゼクティブによって作られたイノベーションを彼らの業務から取り外されないような仕組みをどのように作れるのだろうか。一人の知事や市長から次の知事・市長への移行を支援するにはどのようなツールが必要なのだろうか。 リスク耐性 我々は政府のリーダーや職員に対して、通常彼らが尻込みするリスクをとるように、どのように説得できるのだろうか。我々は、政府の内部に、適切に予測された、妥当なリスクが取れるような組織カルチャーを作る必要がある。 オープン・ガバメントを成功させるためには、透明性、公開性、データ主導による意思決定等の原則を民主主義と同義にする必要がある。コミュニティの知恵と共有することの価値から大きな便益を得るためには、placing our hopes in whispered promises toward doing the practical work of building useful, sustainable tools and a supportive ecosystem.我々自身の希望を乗りこえていかなければならない。 ### 著者について John S. Bracken はナイト財団のメディア・イノベーション部長。彼はナイト・ニュース・チャレンジ、ナイト・プロトタイプ・ファンド、ジャーナリズムプログラム、技術投資プログラムの監督をしている。Brackenはデジタルメディア、メディア政策、イノベーション、グローバル・インターネット・フリーダムの慈善投資家として10年以上の経験があり、以前はフォード財団、マッカーサー財団での経験もある。

(翻訳:川北博史)

5_19_Towards_Community_Data_Common

4_18_Benchmarking_Performance_Data

4_17_Louisville_Data_Driven_Improvement

4_16_Data_Driven_Decision

--- layout: chapter なぜ政府はデータによって意思決定しなければならないのか 第16章 第4部 author: - 名前:ベス・ブラウアー Twitterアカウント:@biblauer 職業:GovStat(ガヴスタット)の責任者 雇用者:Socrata(ソクラタ) photo_url: /images/authors/beth.png about: "Former Director of Maryland StateStat, now building out the GovStat performance management platform for Socrata." permalink: /part-4/why-data-must-drive-decisions-in-government/ --- データ重視型政府の夜明け 2013年の政府の展望は課題と機会を含んでいる。経済は不安定で、政治は極めて分裂し、多くの人が10年前に比べて政府のサービスに依存している状況だ。そしてまた私たちは、日々をかつてない情報の開示と利便性、透明性の時代に暮らしている。 アメリカの成人の85%はインターネットにアクセスでき、56%がスマートフォンを所有し、「グーグル」は動詞になり、すべての人をレストラン評論家にした(Fox 2013)。市民はほとんどの疑問への答えをオンラインで見つけることに期待し、政府からより多くの回答を求めている。それにもかかわらず今のところ、政府関連のアクセスのしやすさは遅れたままだ。 クラウド上のデータストレージやAPI(※ソフトウェアコンポーネントが互いにやりとりするのに使用するインタフェースの仕様)といった最先端の技術を採用すれば、政府が持っているデータの宝庫を解放し共有することができる。ところが、一部の政府機関では、革新という観点で民間に遅れをとっているばかりではなく、それらが加速されているとはいいがたい。データは長いあいだ政府の資産と捉えられてきた。しかし、現在では、継続する都市問題の解決策を見つけるために、政府と市民、起業家、研究者のあいだで、より簡単に共有され利活用されるものになっているのだ。 データ重視型政府と市民によるイノベーションの新時代は形をあらわしつつあり、今のところその成果は素晴らしいものがある。それらは将来において何が可能であるかという一つのヒントを与えてくれる。それはデータ重視型政府が社会問題への最適な解決策を生みだすことができるということではなく、さまざまな政府がどれだけ早くその考えを受け入れ恩恵を得ることができるかということだ。 メリーランド州のステイトスタットで、最も古く最も成功を収めたデータ重視型政府の元リーダーの一人として、わたしがどのようにしてその役務にいたったか、在職中に何を成し遂げたのか、なぜ現在のデータ重視型統治のプラットフォームを開発する民間企業への道を選んだのかをお話ししたいと思う。 わたしはどのようにしてデータ重視型政府へ加わったのか 多くの人の日常生活において、政府は付属的なものだ。わたしがロースクール(法科大学院)に通うことを決めるまでは、それは確かなことだった。わたしは法律の学位によって人々の手助けをしたいという目標を持っていたが、政府に入ることに興味はなかった。 (文脈上「しかし、」がほしい)数多くの人々の生き方を変えたあの日、2001年の9月11日は、ついにわたしを公務員の道へと進むことを決心させた。 当時、わたしはロースクール(法科大学院)を卒業したてで、新婚、ニューヨーク市のヘッジファンドで働いていた。前日の2001年9月10日、道にできた穴ですべってできた傷の治療のために病院へ行ったことで、9月11日の朝、わたしは世界貿易センタービルへ向かわずにすんだのだ。 その経験は多くの内省を促し優先順位に変化をもたらした。夫とわたしは故郷のボルチモアに帰ることを決心し、わたしは人々の手助けをするためにロースクール(法科大学院)へ入学したという当初の理由を思い出したのだ。 わたしは公選弁護人に転職し、法廷弁護士の勉強をしながら、保護監察官として働いた。メリーランドの少年課で過ごすにつれて、わたしの訴訟に関する法的手続きの見識は磨かれていった。 当時、ボルチモアのマーティン・オマリー市長は、行政を率いる一方で、ニューヨーク市で成功したコムスタット・プログラムにヒントを得た(街を)活気づけるいくつかの事業を行っていた。 例えば、ニューヨーク市のコムスタット・チームは警察要員との相互参照ができる犯罪地図を持っており、犯罪取り締まり要員は均等に分布しているが犯罪はそうではなかったという、明白な違いを暴き出した。賢明に部門別の人員配置をするという、ニューヨーク市の指示はかなりの部分の犯罪を一掃できたのだ。犯罪が減れば、たいてい何かが始まる。ニューヨーク市の場合、産業や旅行業、より活気のある地域がそれだ。データ重視型の手法は効果があることが証明されたのだ。 オマリー市長は、この手法をボルチモアの犯罪を一掃するためだけでなく、より広い範囲に使いたいと思っていた。彼は犯罪を減らすだけではなく、街全体に影響を及ぼし改善したかったのだ。街を捨てて郊外へ去ってしまった人々に返ってきてほしかったし、繁華街を安全と幸せな訪問者であふれさせたかった。彼はボルチモアのすべての子どもたちに最善の教育を受けさせ、清潔で効率的な街づくりをしたかったのだ。 結果的に、彼はチームを率いてオマリー版コムスタット、つまりシティスタットをつくり出すことになった。それは状況を一変させた。データに重視型の手法は犯罪に影響を与えただけではなく、市のすべての行政部門にデータによる意思決定のプラットフォームを提供した。それは、311非緊急時コールセンター通話記録や48時間障害対応保証のような市民を利益となるサービスを生みだした。 わたしは、少年司法制度の立場からシティスタットの成功を見守る中で、データによって問題を分析することに自然に魅力を感じていた。 メリーランド州ステイトスタットの誕生 2006年、ボルチモアのオマリー市長がメリーランド州知事になったとき、シティスタットが州全体に広く展開されることは明らかだった。選挙後、彼はわたしを青少年課の課長に任命した。その後間もなく、少年司法制度の仕事に就いていた経験を見込んで(現状に満足しないわたしの性向もあったが)、オマリー州知事はわたしをステイトスタットのディレクターに迎えたのだ。 わたしはその計画を率いていた5年間で、メリーランド州の政府運営の根本的な変化における重要な役割を果たすことができた。その目的は、もとよりデータ重視型の意思決定であり、待ち望んでいた改革だった。 わたしたちは当初、州政府内の大きな部局に焦点を合わせていた。(しかし)オマリー州知事のメリーランドへの構想は意欲的で大胆なものだった。彼の目標には、2015年までにメリーランドにおける空腹な子どもをなくすこと、2018年までに州内の犯罪を20%減らすこと、2025年までにチェサピーク湾を「健康への転機となる湾(△)」にすることが含まれていた。彼はシティスタットを通じたそれまでの経験から、これらの複雑な問題を解決するためには、多様な部局からのデータが不可欠であることがわかっていた。彼は解決策を見いだすために、目的意識を持って異なる部局から人とデータを集めたのだ。 ステイトスタットの成功談 空腹な子どもたち 一例として、空腹な子どもをなくすというオマリー州知事の目標を取りあげてみよう。これはとても困難な目標だ。加えて、空腹の終わりを数値化するのは難しい。どれだけ無料の昼食を配ればいいのか? どうやって空腹な子どもの数を数えるのだろう? さらにことをより複雑にしているのは、空腹な子どもたちへの取り組みを、部局ごとに異ったやり方でばらばらに行っている行政サービスだ。空腹な子どもたちの減少数は、学校や非営利団体、社会福祉機関の調査に載っている。2006年にオマリーのステイトスタットがはじまるまで、これらの関係者たちは、みんなが同じ目標を達成するために努力していたとはいえ、解決策を見つけるためにデータを集めたり恊働したりすることはまったくなかった。それに加えて、食糧配給券を使用したり無料の昼食を手に入れたりするのは不名誉なことで、州政府はどのくらいの数の子どもたちが空腹な状態にあるのか実際に把握していなかったのだ。 一旦すべての関係者を同室に集めデータをまとめてみると、学校給食がその根幹であることが判明した。学校においてより多くの子どもたちへより多くの給食を供給できれば、状況を改善する好機となることがわかったのだ。わたしたちは給食サービスの拡大する必要のある地域について一体となって取り組んだ。 無料の昼食は、やがて無料の朝食や夕食となり、夏期講習の際の無料の給食となっていった。わたしたちの努力はどのような結果をもたらしのか? もはや子どもたちは空腹でないだけではなく、栄養の十分な子どもたちは学業において良い成績を収めるまでになった。わたしたちは成績の劇的な改善と問題行動の大幅な減少を認めたのだ。無料の給食と成績の改善とのあいだに直接的な相関関係を見つけることはできなかった。しかし、メリーランド州の多くの指導者は、無料給食の拡大がなければ、メリーランド州が『エデュケーション・ウィーク』紙のベスト・スクールとして2008年から、2009年、2010年、2011年、2012年までの5年連続で選ばれることはなかったということに同意している。(『Quality Counts 2012』 2012) 2008年から、2009年、2010年、2011年、2012年までの5年連続 > 2008年から2012年までの5年連続 里子の安全 別の目覚ましい効果として、人材開発省とともにメリーランドの里子たちがどのように扱われているかを調査したことがあげられる。彼らははたして安全でよく面倒が見られているのか? わたしたちの分析の一環として、里子のいる住所とメリーランド州で粗暴犯罪者と登録性犯罪者が最も多い地域とを重ね合わせたいと考えたのだ。 この位置情報は、それぞれ別の部局にあったため、それまで対照されることがなかった。法的な障壁により、里親の選考課程もまた一緒にされることがなかったのだ。 ひとたびそれらを集めてデータを視覚化してみると、最も被害を受けやすい子どもたちは最も危険な犯罪者の近くに住んでいることが判明した。わたしたちは最も懸念すべき状況に対して安全性の評価をすることができたのだ。このことは今もなお、わたしのステイトスタットのディレクターとしての最も誇らしい成果だ。 財政の安定 2007年、オマリー州知事は増税を決めた。差し迫った経済破綻を目の前にして、まず一番に無駄遣いを探し解消したのだ。2006年、オマリー政権は6000近くの州の職務を廃止するプロセスに着手した(O'Malley, 2013)。加えて、多くの州では狂ったように減税をしているのに、わずかとはいえない増税というとても嫌われる決定をした。このプロセスにおいてデータはわたしたちの手助けになった。 後から考えると、増税はメリーランド州が(他の)多くの州よりも不況をうまく切り抜けることを可能にした。わたしたちは(国中に)広がっている影響を免れることはなかったが、ぎりぎりまで財源を削減し、収入増とサービス削減に関するデータ重視型の意思決定をすることができ、メリーランド州はたった9つの州のひとつとして債券格付けのAAA(トリプル・エー)を取り戻すことができたのだ。 ステイトスタットの結果 良好な大気の質が失業者を職場に戻すという適切な方法から判断して、データに基づいたアプローチはメリーランド州において重大な影響を与えた。異なった部局から集められた情報は、わたしたちに新たな見識をもたらし、データの力を証明してくれたのだ。 全体として、ステイトスタットの成功はまさに驚くべきものといわざるをない。最初の3年間で、メリーランド州は超過勤務手当について公的安全機関だけみても2000万ドルが節約できた。わたしたちは、印刷所、公用車を一本化することや事業における重複をなくすことによって経費を削減することができた。 オマリー州知事はまた、犯罪を減らすという約束も果たした。州内の凶悪犯罪は2007年から2012年にかけて25%減少した。実際、2011年に起きた殺人は2006年と比べて27%減っている。とりわけボルチモア市では歴史的な犯罪の減少をみた。 さらに、オマリー政権は、不況下の失業を81%回復させながら、最初の7年間で83億ドルという巨額の支出削減を成し遂げた。これはアメリカ国内で8番目の早さだ。その一方でオマリー州知事のチームは、そのほとんどが子どもたちですが、360,000人を超える医療保険の拡大に一役買った。 2012年、メリーランド州はアメリカ国内において15番目に低い担保権執行(差し押さえ)率になった。 高校の最上級生の87%が卒業し、2012年には2006年と比べ56%以上多くの学生が、自然科学、テクノロジー、工学、数学などの飛び級のテストを受けた。 成果を数え上げればきりがない。 どうしてこのような広範囲にわたる成功が可能となったのか? それはわたしたちが運営指針をデータに委ねているからだと考えている。これを過小評価することはできない。データ重視型のアプローチは補助的なものではなかったのだ。ステイトスタット計画は、メリーランド州において全予算と職員の80%を監督した。各部局はステイトスタットによって、週ごととまではいかなくとも、月ごとにチェックし、四半期ごとにオマリー州知事が表明した15の目標を見直した。 いろいろな意味で、ステイトスタットをはじめたタイミングは理想的だった。データ重視型の意思決定は常に有益で、大不況の真っただ中にあっても、わたしたちは確実に少ないロスでより多くのことができた。市民への事業効率化と正しい判断をするために、わたしたちはどの業務が最も重要かを理解しなければならない。その答はデータの中にある。 オープンデータへの転換 ステイトスタットにおける初期の最大の課題はデータがさまざまなところからきていることだった。信頼できるデータベースなしに、わたしたちは情報を中央に集め保存することはできなかった。それどころか、わたしちは手作業で集計表をまとめた。わたしたちには、さまざまな情報源から一般の人々または内部チームへとわたるデータへの所見を監督する手だてが必要だったのだ。 わたしたちはビジネス・インテリジェンスやデータベースによる解決策を調査したが、結局はオープンデータが勝利を収めた。わたしたちのオープンデータ・ポータルは、どの部局からでも他の部局の情報を見ることができるように集中化され標準化されていた。そして、それは市民からも見ることが可能となっていた。 わたしたちはオープンデータ・ポータルを公開ダッシュボードの基盤として用いた。わたしたちは市民がわたしたちの目標に関連したデータを確認し表示できるように枠組みを構築した。ステイトスタットの過程をより公にすることで、行政が市民のためにどのような仕事をしているかを市民が理解しやすくしたのだ。 わたしたちの努力を公開することは、有権者を参加させ、わたしたちの手助けになった。わたしたちがデータを公開し問題を説明すれば、市民はわたしたちを信頼し応えてくれる。わたしたちが再生法予算を受け取ったとき、市民は彼らの地域の中で必要な事業を指摘しはじめた。わたしたちは市民のためにウェブサイトを開設し、コメントを書き、どこに予算を使おうと計画しているかをフィードバックした。 わたしたちのオープンデータによる可視化の努力は、メリーランド州における市民主導の生活改善運動に拍車をかけた。 データ重視型政府成功の本質 ステイトスタットを運用した5年間、どうやらわたしたちはデータを用いてよりよい決断をし地域社会と向き合うために適した手法を取れたようだ。わたしが作った3つの基本指針をあげてみることにしよう。 政府の会話についてデータを監督し人々に情報を提供すること。 開発者がデータを利用できるようにし、エコシステムを振興させること。 データ分析官が関係官庁や開発者と話し合える協調環境を育成するともに、全員が全体像を理解し、リスクを取り、意欲的な目標を掲げる権限が与えられること。 一方で、オマリー州知事は成功するために必要なリーダーシップスタイルを定義した。彼が育んだこの技術を基盤とした説明責任はメリーランド州の行政のあらゆる段階にも導入され、データに重視型の意思決定をするため適材適所の人員配置によって支えられている。彼はステイトスタットがいかに繰り返され、正しいデータによって補強された拡張可能な仕組みにより、メリーランド州が直面するいかなる課題にも実践的に対応できるという展望を持っている。 首長の構想と揺るぎない関与がメリーランド州で成功をもたらした本質だ。伝達性と拡張性の観点から、ステイトスタット・スタイルによる手法が世界中の政府によって再生されるのはかなり困難に思える。強いリーダーの存在が拡大を確実にし、組織において長期にわたり採択される鍵となる。 なぜわたしは民間企業へ移ったのか ステイトスタットモデルのオープンデータ・アーキテクチャで働くうちに、わたしはオープンデータを実践し最適化するプラットフォームの供給者であるソクラタと恊働するようになった。わたしはソクラタがオープンデータの拡大に必要な拡張可能な技術を持ち、より多くの人々をデータに基づいて管理できることがわかった。この考えはわたしを刺激した。 もしもわたしがメリーランド州で学んだことや計画したことが、世界中の政府がデータ重視型になることを活性化させられるとしたらどうだろうか? ソクラタはあの製品を作りあげるためにわたしを招き入れた。わたしたちはそれをガヴスタットと名付けた。そして、その実現はわたしにとって経歴を特徴づけるものとなっている。それはメリーランド州が拠り所としていた過去数十年のスタットモデルで経験した成功事例を使って、いかなる州や市町もデータ重視型の意思決定を実行できるプラットフォームを生みだす。わたしはその戦略を、早く簡単に他の機関がデータ重視型の管理が高い成功率で達成できるようにしたかったのだ。 データ重視型をはじめたばかりの政府にとって、わたしはこのツールが、目標設定や適用基準、成績追跡へ向けた成功事例を通じて、彼らをガイドできるようにしたかった。オープンデータの利用経験を持つより手慣れた政府にとっては、このプラットフォームが、迅速かつ効率的に成績追跡と能力報告を高めることが可能となるのだ。 これらのような、またその中間にある政府にとっては、本質的な市民コミュニケーションが鍵となる。ガヴスタットにおける目標や測定基準、スケジュール、記録は、データの背景と公表を知らせるダッシュボードを通じて市民に伝えられる。市民が自らの生活の質を向上させる取り組みに関わることができるという、これはループの完成だ。 わたしはなぜオマリーチームを辞めて民間企業で働くことになったのかとよく聞かれる。わたしたちがステイトスタットの一員としてつくり出したものが変化したのだと思う。また、地域的にも、全国的にも、世界的にも、政府は総じて変化すべきなのだ。わたしたちはデータ重視型の手法を受け入れないで、意思決定における優れた創造性と恊働の利益を得る機会を失うわけにはいかないのだ。 ソクラタの一員として働くことは、その方向で目立った変化をもたらす一番の近道だった。正直にいって、オマリー州知事と働いたなら、けっしてやめることはできない。今やわたしは、この手法の重要性を説く彼のメッセージを伝え歩き、しばしば困難な政府の運営を完全に軌道にのせ、すべての人に素晴らしい結果をもたらすことが可能だという評判を広めることができるのだ。 政府におけるデータ重視型成果管理の未来 メリーランド州での成功は他の州や市から注目を集めた。わたしがステイトスタットのディレクターをしていたとき、多くの政府関係者が見学に訪れ、(システムの)移設について話し合いをした。ステイトスタットが誕生してからわずか6年で、全米各地の多くの州や郡、市がデータ重視型のリーダーシップの手法を受け入れたのだ。2013年5月9日、オバマ大統領のオープンデータに関する大統領命令への署名は、はっきりとデータ重視型の連邦政府への新たな関与を示すものだ。 いずれの「スタット」プログラムは、多少の違いはあるが、すべてがニューヨーク市のコムスタット構想から生まれた4つの理念に基づいて運営されている。 1. 正確で時宜を得た知力:何が起きているかを知る 2. 効果的な戦略:計画を立てる 3. 迅速な対応:すぐに行う 4. 絶え間ない追求と評価:うまくいっていればさらに、でなければ他のことをする(Godown, 2009) データ重視型の管理は単にオープンデータに支えられているだけではない。オープンデータの最大の影響についての伝統的な見解は、民間の経済活動を刺激できる開発力を生みだすことだ。レストランの評価と一緒に衛生規範違反をモバイル機器に表示するものをはじめ、車がレッカー移動されたときにメールを受信するものまで、アプリの開発分野だけとってみてもじつに数多くの例がある。これらはオープンデータ提唱者によって予測された実際に生活の質を向上させるタイプのものだ。 しかしながら、政府と市民にとって重要なことを前進させるためにデータを用いることを許すツールの安価な利用など、オープンデータの最も多くの変革の成果は、政府が効率的になったときにあらわれる。オープンデータの影響は行政サービスをあてにしている人だけではなく、日常生活の中で政府と関わるすべての人たちにおよぶ。運転免許を取得したり家の建築許可をとったりするのではなくても、わたしたちは皆、政府と関わりをもっているのだ。 これらのあらゆる相互関係はわたしたちの幸福指数に影響をあたえる。それぞれの相互関係は、政府が市民にどのように貢献するかによって影響される。オープンデータは、行政サービスを変革させ、人々の期待感に影響する力を持っている。政府は動かないという考えを一変させる力を持っているのだ。 わたしのお気に入りの格言は「潮がさせばすべての船が浮かぶ」だ。最もきびしい緊縮財政の中でさえ、政府が機能した例がある。公務員がオープンデータを使えば使うほど、各政府がそうなっていく。成功事例を増大させる機会がより多ければ、政府の事業を効率化する方法を考え出せ、善行を推進し、起業家精神を育み、実際により多くの成果を見ることができるのだ。 政府がデータ重視型でデータ追跡に裏付けられた結果を資料としているなら、これはすべて可能だ。 これはわたしの展望で、ガヴスタットの構築はできるかぎり多くの人々をできるかぎり早く引きつける一歩だ。犯罪や障害、貧困といった一般的な問題の測定をいち早く標準化することができれば、広い地域の孤立地帯で何が起きているのかをすぐに再現し見積もることができるだろう。ニューオーリンズ市が障害を取り除くためにうまくいく計画をもっているなら、それを標準化しよう。そしてソート・リーダーシップ(考え抜かれたリーダーシップ)を共有するプラットフォームを作っていこう。問題の大半が解決しているのに、フィラデルフィア市が車輪を作り直す(=あらたに解決策を考える)必要があるだろうか? わたしたちは現在、オープンデータとパフォーマンス・インサイト(Oracleデータベースの最適なパフォーマンス維持と安定稼働を実現する運用管理ツール)の中核で、データ重視型の管理手法がもつ最も激変し、成熟した絶好の機会を得ています。それはこの手法が広範囲で採用されるかどうかではなく、いつなのかということです。わたしたちは、地域的、全国的、国際的に直面する課題を解決するために、政府においてより機動的にデータを使わなければならないのです。オープンデータと実績をより密接に関連づけるほど、わたしたちは成果を実感しデータを豊かなものにできるのです。 ### 著者について ベス・ブラウアー シアトルに本社を置くオープンデータプラットフォームプロバイダー、ソクラタのを後援するガヴスタットの責任者。2008年から2012年までメリーランド州ステイトスタットおよびマーティン・オマリー州知事を後援する部署の責任者を務める。 ### 参考資料 エデュケーション・ウィーク(2012). ▲品質数 2012. ザ・グローバル・チャレンジ. エデュケーション・ウィーク, 31(16). 以下参照 http://www.edweek.org/ew/qc/2012/16src.h31.html ジェフ・▲ゴーダウン(2009年8月) コムスタット・プロセス:犯罪減少管理への4原則。警察署長、vol. LXXVI (no. 8)。 * [Fox, S. (2013, July 1). Pew Internet: Health. Retrieved from http://www.pewinternet.org/Commentary/2011/November/Pew-Internet-Health.aspx](http://www.pewinternet.org/Commentary/2011/November/Pew-Internet-Health.aspx) * [O’Malley, Martin, State of Maryland. (2013, January 30). State of the State: Better Choice; Better Results. Retrieved from http://www.governor.maryland.gov/documents/2013StateoftheState.pdf](http://www.governor.maryland.gov/documents/2013StateoftheState.pdf)


(翻訳:George Cohta)

3_14_Local_Scale_Local_Data

3_13_Generating_Economic_Value

--- layout: chapter title: "オープンデータを通じて経済価値を生み出す" chapter: 13 part: 3 author: - name: Michael Chui job: Principal employer: McKinsey Global Institute photo_url: /images/authors/chui.png twitter: mchui about: "インディアナのブルーミントンの前のCIOでビジネス、経済、社会の情報技術革新に関する調査をリードしています。." - name: Diana Farrell job: Director employer: McKinsey & Company photo_url: /images/authors/diana.png twitter: Farrell_Diana about: "より大きく、継続的にパフォーマンスをひきだす政府のリーダーを支援する政府のマッキンゼーセンターの共同設立者" - name: Steve Van Kuiken job: Director employer: McKinsey & Company photo_url: /images/authors/stevev.png twitter: McKinsey about: "増大する市場の適応性と運用性能を変容させる健康を促進を解決する技術をもたらしている。" permalink: /part-3/generating-economic-value-through-open-data/ --- 企業や公的機関は生産的で革新を可能にするだけのビックデータや解析を包含しはじめている。健康から工業そして、公的機関が参加できるまで幅広く、広大な部署のよりよい意思決定のための多様性のあるリアルデータ(ソーシャルメディア、道路の交通情報等)の使えるデータが増えることによって私たちは経済の巨大な可能性を述べることができる。(Manyika et al., 2011) オープンデータ--政府やその他の機関はビックデータの効能を最大限にするために重要な役割を演じるために自由で可能性のあるデータを作成し続けている。オープンデータは交通データ医療に関するデータのようなものが公共サービスや研究を提供する道しるべを生み出させるデータセットが使われて革新的な商品やサービスを生み出すサードパーティとなりうる。このようなことは二年以内には世界じゅうのトレンドとなり、8から50を超える基金によるオープンガバメントパートナーシップが増加するようになり、、そして、それはニューヨークやシカゴ、ボストンといった自治体がオープンデータを通じて自由になる。 オープンデータを先導させるモチベーションのキーのいくつかは意思決定の透明性を促進したり、議員や官吏の責任を作り出したり大きな市民の約束である。しかしながらそれに加えて、それはデータを公開する政府機関の壁を越えて経済価値を生み出すことのできるデータの透明性を増大させることである。このようなデータはもうすでに存在している企業や政府機関の生産性の向上に役立つために使われるのではなく、それはビジネスの創造や市民個人個人の富の向上につながるものである。 2013年の秋に出版予定の考察の中にオープンデータの経済的な衝撃の可能性を研究している中で照明することをマッキンゼーは約束した。この論文の中で、健康における研究から事例を含みつつ、予備的な仮説を我々は述べていきたいと思っている。(詳しくは “The ‘Big Data’ revolution in healthcare,” McKinsey Center for US Healthcare Reform and Business Technologyを参照のこと。) ### オープンデータの定義 私たちがオープンデータによって何を意味するかと言うことを最初に明らかにするを助けたい。私たちはオープンデータの定義を4つ使いたい。 誰でもデータにアクセスできること。これは鍵になる基準である。データを作成した組織の外部にもデータがアクセス可能になること。 機会で読み取り可能であること。データは利用可能でなければならない。それは他のアプリケーションを使うことによって簡単に使えるフォーマットになることを意味する。 無料であること。データアクセスをするために費用が無料、または低廉であること。 データ利用の権利が制限されていないこと。契約や制限などにコントロールされていないデータは革新の可能性を最大限にする。 しかしかながら、その利用が完全に制限されていなくても私たちはより大きく使われるように作成されるデータにおいて、重要な意義や開放性についても認める。例えばアメリカ医療サービスセンター(CMS)では医療サービスのクレームデータを公開している。それは、医療調査者に資格を与えるために利用するだけではなく、どのようにデータが使われるか厳密なルールづけにも使われる。それにも関わらず,外部に提供されるデータは作成が可能なだけ、増やされる。同様に機械で読むことができるように多様な種類が存在する。データは専用のフォーマットでのみ読み込み可能で、しかしそれではオープンスタンダードのフォーマットより使いにくく、そしてそれは一つのベンダーによって決められたフォーマットの変更に服従させてはならない。オープンデータの厳密な定義はデータアクセスには全くコストがかからないという一方で、費用をとっている聞かんもあり、それは、いまだに少なからぬ価値をもっている。 オープンデータで大変近い関係にあるのは”私のデータ”という概念。そしてそれは個々人や諸機関がすでに集めたデータを提供することも含む。アメリカにおいては“Blue Button”が患者が自分の健康情報にアクセスするのを提供するための健康管理を促進している。(詳しくはwww.bluebuttondata.orgを参照のこと)同様に“Green Button”プログラムはスマートメーターによって集められたデータのようなエネルギー利用情報について消費者がアクセスするのをエネルギー提供業者が提供するのを促進している。(詳しくはsee www.greenbuttondata.orgを参照のこと)“私のデータ”のアプリケーションや情報はすべてにアクセスできる状態に作られておらず、データを作り出した個人や機関がアクセスするためだけに作られている。これらのユーザーは他のサービス業者に利用可能にすることを決めることができる。(例えばエネルギー消費の解析やエネルギー効率改善の提案のサービスなどである。) ### なぜ、今やるのか? なぜ、オープンデータの機運が高まっているか考えてみる価値もある。第一に機関によって生み出されたり、集められるデータの量と種類がすでに臨界点を超えた。:政府によって作られるトランザクションデータ、物理世界から集められるセンサーデータ。第二に、コンピューターの進歩のおかげで様々な機器で現実世界や巨大なデータを解析することが大きく進歩した。今日、スマートフォンは世界チャンピオンクラスのチェスの名手を打ち負かすだけの十分な性能をもっている。 同時に重要なのが政府機関がオープンデータの適応の採用の収集に力を入れている。政府の内側、特に外側において双方の意思決定者はデータや実験による洞察やサポートに頼っている。(例えば、どのように人々は振舞うかなど、webや現実の世界で決定するのに実験をコントロールし続ける。)同時に政府はより透明性になる圧力にさらされ、一方で同時にどれ以上か以下の財政的な制約かで行うようになる。また、財政的な圧力は政府により経済成長と革新を探求するこを強いることになる。そしてそれはオープンデータによる新しいビジネスの触媒になりうる。 最終的にこれらは社会的な利益である:より個々人が自分のデータの主導権を通じて自分のデータにアクセスする権利を得るようにオープンデータが民主的な情報になることができる。そして人々がより多くのデータセットにアクセスを得てプログラミングをするようになる。自分の興味に基づいて個々人がオープンデータを使ってアプリケーションを開発することができて、そしてさらにより大きな組織がデータサービスを提供することで信頼が寄せられるようになる。 ###どのようにオープンデータは経済価値を創造するのか 私たちの現れている仮説はオープンデータが有効に使われることにより、経済価値の重要な量が解き放つことができることである。例えばアメリカの健康管理において、よりオープンデータ利用することを通じて年間3000億ドル以上の価値の可能性をみた。(例えば効果と経済性の両方からみた治療の決定にオープンデータの解析を通じてなど)私たちはまた単独でのデータアクセスでは価値が解き放つことはないと認めている。健康管理においてたくさんのシステム的な変更が適切に効率性と遺伝的資料がその最大限の可能性に到達する比較の巨大な分析によるデータによる革新がその前に必要になってくる。だが、変更が適切であれば、健康管理において正しい変化を結果として得ることができる。私たちは同様の変化が他の分野でも起き得ると信じる。 それでは、何が、私たちが発見した価値創造の原型のいくつかなのか?私たちはビックデータの研究をうちたてている。私たちはオープンデータの利用が価値を解き放つことができる5つの共通の方法をみることにする。 #### 透明性 多くの場合において、私たちは適切なデータにアクセスすることなく、決定を下している。正しい場合において、正しい意思決定者に単純な提供されるデータは巨大な勝利をもたらすことができる。例えば、ほとんどの患者と初期治療の内科医は、どのような外科的な処置があるのか、特別な手続きについてどのくらい違った提供料金であるのかなど限定的な知識しかもっていない。そのようなデータが存在するとき、-そしてそれが適切なフォーマットで提供されていればー透明性の結果より良い決定を導くことができる。アメリカの健康管理の研究において、私たちは患者たちの正しい価格設定(ベストな結果の記録や、ベストな費用を伴うひとつとして)は年間500億から700億の価値の解放ができると見積もっている。 #### 可変性を明らかにしつつ、実験を可能にしている 透明性に近い関連性は過程や結果の可変性明らかにする概念である。それからその可変性のドライバーの確認の実験に使われてる。例えばオープンデータは様々な学校や学区をまたいで生徒の到達度を改善することにおける可変性をあきらかにするのに使われることができる。この情報に透明性があるとき、教育結果の改善の動機になる。パフォーマンスにおける違いを単純にすることに付け加えて、オープンデータは生徒の到達度を上げる技術を教えたり組織が決定をしたり、目的ある実験の結果の解析やデザインをするのに使われることができる。 #### 行動を適合させる人口のセグメント オープンデータは必要に応じたベストなサービスを受けたり、清貧を受け取ったりする、個々人や諸機関を保障するために使われることができる。これらはマーケティングで古くから言われていることであるが、我々は無駄に使われた半分は知っているが残り半分は知らないままである。オープンデータはより効率的に半分のマーケットがどうなっているかを追加的に洞察を発見することができる。例えば、屋根のソーラーパネル業者は公共のリソースである、天気や空中画像などを使うことにより、十分な屋根をや太陽の露出のある顧客を絞り込むことができる。 #### 人間の意思決定は増加し、自動化している。 オープンデータは意思決定を促進したり、促進するために解析されるデータの議論として使われることができる。私たちは確認されるバイアスによってしばしば影響を受ける人間の意思決定の経済的なふるまいや他の分野について調査から知っている。さらに言うと、私たちの意志は、私たちが処理できるデータの数に制限を受ける。例えば、百万人の分析のあとに、心循環器系COX-2抑制剤(非炎症系の部類に入る)のリスクが確認されているのみである。いくつかのケースにおいて、自動的なリアルタイムの意思決定に使われることができる。例えばオープンデータ交通情報をもった、センサーをつんだ混合情報からは、交通渋滞をやわらげる信号の時間を自動的に適合させるシステムを構築することが可能になる。 #### 新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造している いつ新しい製品やサービスが現存する会社から生まれるか、完全に新しいビジネスが創造されるかについて、オープンデータによる存在するアプリケーションの大部分のうち、いくつかはやってきている。例えば、2012年に健康管理データの200を超える新しい新しいアプリケーションがUSヘルスデータイニシアティブフォーラムに提出された。一つの提案として、Asthmapolisと呼ばれるスタートアップから、喘息患者の治療計画の個人化の改良に喘息吸入器のセンサーと環境のオープンデータ(花粉の数やその他アレルギー物質)の混合利用がある。 ### 経済価値を創造するのを可能にするもの 成功しているオープンデータイニシアティブはたくさんの要素とオープンデータコミュニティは成功に近づけた物語と実践をシェアしはじめている。進行中の研究をもとに、成功するオープンデータイニシアティブに必要な次の要素を提案したい。 潜在価値による、オープンデータにかける労力に優先づけを行う。 オープンデータイニシアティブは実行のしやすさに基づいて開放される優先づけがなされるようにもしばしば見える。(例えば作りやすいデータから開放される。)私たちは価値創造される可能性の量が多いものを優先的に処理されるべきであると私たちは信じている。例えば公的な利益を直接得ないデータの開放であってさえも企業や消費者にとって経済効率を重要な増大を巻き起こすことができる市場(エネルギー効率データ、購入データ)において他の重要な会社のベンチマークとなりうる、法規上、コンプライアンス上のためにデータセットは集められた。もちろん、どのオープンデータが価値創造に使われるのかすべての方法を予測することはできない。だから例えされが、よく使い方がわからないものであっても、外の価値創造者への大きな可能性のコミュニティにオープンデータが解放されることが重要である。しかし近いうちに、実行のし易さに沿って、価値創造の可能性が過程の優先付けにすべきである。 #### オープンデータの開発者の生態系を活発にする 確かな広がりのために、オープンデータはプラットフォームを演じる。例えばサードパーティを打ち立てることができる基礎は製品やサービスを革新させる。オライリーメディアの創設者である、ティムオライリーは“Government as a Platform” (O’Reilly, 2011)の中で概念を立派に述べた。成功するプラットフォームのためには、あなたのプラットフォームを構築するための貢献の盛大な生態系をあなたは必要としている。成功するオープンデータイニシアティブのために、オープンデータを使ったアプリケーションを作成する意思のある開発者の生態系盛大にすることが重要である。これにはマーケティングと同様のものが必要とされ、オープンデータによる可能性の気づきを含んでいたり、オープンデータの利用を納得させたり、(例えばコンテストのような、特別な提案を通じた可能性など)、彼らの経験を支えたりなど、そしてそれはオープンデータを利用することによって帰ってくる励みになるものでさえある。Datapaloozasはアメリカ政府がスポンサーになっているものでオープンデータを利用する開発者の生態系を活発にする例である。なぜならばそれらは共通のイベントに開発者を集め、成功を祝い、そして、オープンデータの周りの興奮や可視化が起きているからである。 #### データ管理のインフラの構築 確かに、スケーラブルで信頼できるインフラは導入されなければならない。理想的にはそのような決定がなされる外部に接続するオープンデータを容易に作れるように機関内部のインフラはデザインされなければならない。もし、それらは外部のインフラであるのだからこれを可能にするのを助ける案内する原理は内部インフラの構築である。アマゾンは標準のアプリケーションプログラムインターフェース持った内部ITサービスのすべてを必要とする。それから、それは内部から外部の世界へ開発された新たなサービスを表すのを欲している。その過程は比較的簡単である。 データの解放チャネルを明らかにする。 深く考えた思考がどのようにオープンデータが提供されるかというチャネルも与えられなければならない。このような決定はオープンデータ利用の継続と取り込みに大きく影響を与えることができる。サードパーティの開発者が利用するために簡単なフォーマットでデータの解放を考えますか?。データがアップデートされるときにユーザーが迅速に自動的にあなたは手段を提供しますか?。 #### 守られる必要のあるデータの保護 いくつかの機関はデータをデフォルトでオープンにすると、決めたこととする。しかしながら、それらはしばしば、機関のデータのすべてを解放することがよくない理由があったり、オープンデータのオープンさをひとつやそれ以上について制限をしている。(例えば、料金を課したり、利用に制限を設ける。)そのような制限の深く考えられた確認は非常に重要であろう。それらは、安全性、プライバシー、自由さ、よく考えられた属性、極秘情報性を含むことができる。 #### オープンデータコミュニティのリーダーシップの提供 最後に少なくとも、成功するオープンデータプログラムはオープンデータの文化を支えることをコミットして利だーシップをとる必要がある。いくつかの事例において、オープンデータイニシアティブが直面する追加的な仕事(例えば外部のスーテクホルダーの折衝など)のようなマネジメントのリスク超えるような価値の開放をみることができた。一方で同時にオペレーションについての問題が明らかになってさえもデータにおいて誤って伝達してしまったりすることがより引きおこされっるようである。オープンデータイニシアティブが革新やリスクの価値があることを価値全体をトップからリーダがトーンを合わせる必要があるだろう。そのうえ、リーダーはデータの消費者の扱いについて、よく学んで、その関心や提案についてよく反応して外部のデータ消費者コミュニティに約束もしなければならないだろう。 特に小さな自治体に対しては、データイニシアティブを開くための財政的、人間的両方の資源を見つける朝鮮をなされることができる。 オープンデータの投資を助ける一つのポイントはオープンデータのインフラを十分にすることである。まるで外部インターフェースのように内部のITサービスのインフラを作っていること。確かに機関自分自身で効率的にスケーラビリティがあるように改良している。2番目にクラウドのような技術革新はより管理のための投資が必要なレベルとなっている。もっと一般的には仲間やシビックハッカソンのオープンソースの革新による外部資源の利点を得ることはより可能性を開放することができる。究極的には諸機関は他の優先の文脈の中で自分たちの使命にオープンデータを通じて相対的な価値創造の優先性を決めなければならないだろう。 全体として、オープンデータは政府自分自身、会社、起業家、市民個々人を基盤として含みつつ多様なステークホルダーのために価値を生み出すことができる。機関の外に出して、特にステークホルダーのために価値の可能性の規模や範囲を理解することならびにどのうように効率的にデータユーザーの生態系が作り出されるかということは価値を生み出すための本質となりうるだろう。 ### 著者について マイケルチューイ博士はマッキンゼーグローバルインスチチュート(MGI)の代表。マッキンゼーのビジネス経済調査部門。そこでは、彼は情報技術とビジネス、経済、社会の革新の衝撃に関する研究をリードしている。マッキンゼーに参加する前にマイケルはインディアナブルーミントン市の情報長官であった。そこで彼はインターネットサービスプロバイダーの共同設立者でもあった。彼はサンフランシスコを拠点にしている。 ダイアナファラレルはマッキンゼーのPublic Sector Practiceのディレクターである。そしてマッキンゼーの政府センターの共同設立者で世界代表である。ダイアナ2年間国際経済会議の専門官、小浜大統領の経済アシスタントの副官として2年間勤めたあと、2011年にマッキンゼーに再参画した。彼女はワシントンを拠点としている。 スティーブバンクイケンはマッキンゼーのビジネステクノロジーオフィスのディレクターである。そして、薬学、医学清貧企業、支払者、提供者を含んだ科学技術戦略の実行、開発をマッキンゼー健康管理科学センターで働き、様々な健康管理機関から依頼を受けている。彼はニュージャージーのマッキンゼーオフィスを拠点にしている。 著者達はこの記事の大きな貢献に対して同僚であるニュージャージのマッキンゼーのトップのピーターグローブに大変感謝している。 ### 参考資料 * [Manyika, J., Chui, M., Brown, B., Bughin, J., Dobbs, R., Roxburgh, C., & Hung Byers, A. (2011). Big Data: The next frontier for innovation, competitiveness and productivity. McKinsey Global Institute, May 2011. Available at http://www.mckinsey.com/insights/business_technology/big_data_the_next_frontier_for_innovation](http://www.mckinsey.com/insights/business_technology/big_data_the_next_frontier_for_innovation) * O’Reilly, Tim (2011). Government as a Platform. Innovations, Winter 2011, Vol. 6, No. 1, Pages 13-40.

(翻訳:小川のぶひろ)

3_12_Data_Design

3_11_Open_Data_Culture

--- layout: chapter 取り決めを習慣にする:オープンデータの文化はどのように市民生活を再構築しているか 第11章 パート3 author: - エリック・ゴードン エンゲージメント・ゲーム・ラボ:取締役 エマーソン大学 photo_url: /images/authors/ericg.png twitter: ericbot バークマンセンタフェロー;エマーソン大学准教授;エンゲージメント・ゲーム・ラボ取締役 - ジェシカ・バルドウィン・フィリッピ エンゲージメント・ゲーム・ラボ:研究員 エマーソン大学 /images/authors/jessica.png engagelab エマーソン大学のシビックメディア学部客員教授およびエンゲージメント・ゲーム・ラボ研究員 /part-3/making-a-habit-out-of-engagement-how-the-culture-of-open-data-is-reframing-civic-life/ --- 私たちは情報に溢れた時代にいる。ファイスブックからフィットビットまで、いろいろなデジタルツールによって、より多く考えや行動を集められるようにした。その場限りで公のものと考えられていた人々の考えや行動に関するデータは、今では記録され私有化されている。実際個人個人の移動パターンから時事問題に対する考えまで、個人の公的な活動の結果の多くは私企業の資産として、それぞれの企業のデータベースに隔離されている。このデータは明確な役割をもっているものではないが、アメリカ国家安全保障局が国民のメタデータをモニタリングしていたという事実の最近の暴露は、このようなデータからいろいろな隠された事柄が明らかになる可能性を示している。このような可能性があるにも拘わらず、メタデータがどのように利用可能かに関する一般的な認識が低かったため、この事件は驚く程注目を集めなかった。アメリカ国民の大多数は、国家保全の目的で彼らのメタデータが利用されることに関して、特に抵抗をもっていない(ピュー研究所/ワシントンポスト,2013);同様にアメリカ国民は、個人を特定可能なデータを誰が利用可能とするかのコントロールを個人ができるように企業がすることで、プライバシーが保護されることを期待している。個人を特定可能なデータやメタデータは副次的に作られ、企業の善意によって所有、保護され、必要となれば「貸し出される」ものと一般的には見られている。 そしてオープンデータ運動が始まる。この運動は大まかに、技術と政策のハッカー達が公共の領域でデータの保存と利用を試みる事と定義される。健康診断の記録から地理情報まで、データへのアクセスやデータセット同士の相互運用や変換を容易にするための標準化とデータの蓄積が、このような人々によって進められている。オープンデータは、音楽やニュース配信といった多くの領域で破壊的な影響力をもつことがわかっているが、特に政府と市民生活の領域において効果を発揮する。市民生活のデータというときそれは、消火栓の位置から使われていない建物や道路の穴に関する市民の提供情報まで、公共に関するすべてのデータを指している。このようなデータは私有のデータではなく、公共の場から発信された情報で、だれでもアクセス出来るように扱われるものである。 ここ何年か、政府は大規模なデータセットの標準化と公開を推進してきた。技術者はこのようなデータを集め、フィルタリングをおこない、活用するためのツールを数多く作り出した。このような活動の領域で、利用者はデータの借り手から、共同の所有者や作り手に変わる。オープンシステムのデータにアクセスしたり、自らデータを提供するとき、利用者はサービスを期待するだけではなく、提供したデータがより大きな何かに対して貢献することを期待する。実際にオープンシビックデータは、再利用と再構築によって、データの集まりとしての利便性を高めていくことができる公共の財産である。全体としての価値は、個々の標準化されたデータセットにアクセスする価値以上のものになる。オープンシビックデータの文化は、データを政府が単に提供するものから、すべての市民が所有する公共の資産に再定義する。 シビックハッカーと政府系の人達が、データのアクセス性や相互利用性に関する技術的、あるいは政治的な課題をコツコツと解決しているのと並行して、注目すべき動きとして市民の間で芽生えているデータを利用する文化がある。新しいツールは、市民がシビックデータのレポジトリにアクセスし、データを共有したり提供することを可能にする。このようなツールを使って市民が公立学校の選択をしたり、バスに乗ったり、道路の穴を報告したりするとき、彼らはシビックデータを活用すると共に、シビックデータに貢献している。このような市民が自分のデータや、公共のデータセットへのアクセスを共有することを選んだとき、彼女らはシビックデータの文化に、公共生活の情報がこのように利用可能であり、利用されるべきであるということを示すことで貢献している。この単純だが強力な行動は習慣である。市民としての習慣、あるいは公共の組織やコミュニティーに寄与するという習慣的な行動は、オープンシビックデータの文化の根幹を成すものである。このような行動が市民活動の骨格となる。 なぜオープンシビックデータのコミュニティーは、市民の習慣を考えていなければならないのだろうか。習慣こそが、オープンシビックデータの文化を持続させるものだからである。習慣がなければ、オープンデータに対する要望もなく、緊急に市民行動を起こすための基盤もない。この小論ではシビックテクノロジーの1つである、市への要望事項に対する問い合わせシステム(311レポートツール)、あるいは有権者関係管理(Constituent Relationship Management (CRM))システムを見ていく。CRMシステムは市民活動のアクセス性とリピート性を向上させることで、市民活動への参加の習慣を促進する。3世代に渡る大きく異なるCRMシステムを比較することで、一度確立された習慣がより多様な市民行動につながっていくことを観ていく。 市政参加の習慣の作り方 習慣とは、安定的にあるいはよく起こる傾向のことで、特にやめることが難しいものを指す。私たちは習慣を、喫煙やギャンブルといった悪いものとして考える傾向がある。「実際は、我々の悪い面と同じくらい良い面も習慣である。我々の生活は明確な形がある限り、習慣の集合でしかない。」と心理学者のウィリアム・ジェームスは1892に記している。(ジェームス,1925) 市民の習慣は、ゴミを道に捨てる悪い習慣から他の人が捨てたゴミを拾う良い習慣まで、隣人に対する悪口をフェイスブックに投稿することから交通渋滞に関してツイートすることまで、市民生活を形作る行動のすべてを指す。市民の習慣は毎日繰り返される行動で、公共生活に影響を与える。ジェームズが指摘したように私たちは「単に習慣の寄せ集めであり、ステレオタイプ的な生き物で、過去の自分達の真似やコピーをするものである。」(ジェームス、1925)。従って都市の社会的な意味付けは、既存の習慣は強化あるいは抑止するツールやシステムを備えた、習慣の単なる寄せ集めとなる。政府が使用する時代遅れのデータ管理システムが、不完全だったり標準的ではないデータを市職員に作らせることを考えてみてほしい。場所の分かりにくいリサイクル用のゴミ箱が、プラスチックのボトルを持って歩くことを疲れると感じさせ、近くにあるゴミ箱にボトルを捨ててしまう市民としての悪い習慣を作り出すことを考えてみてほしい。そしてオープンデータにアクセスできることが、人々に周りの生活圏を可視化し拡大するチャンスを与え、より良い判断、より多くの情報に基づいた判断をさせるという市民としての良い習慣を作り出すことを考えてみてほしい。 習慣はそれを構成する部分の総和よりも価値がある。それは市民が個人を超えて、あるいは一連の条件反射的な行動を超えて、市民としての生活をより意識し、それに関与できるようになるための基本的な構成要素である。心理学者のジョン・デューイは、すべての学習は習慣的な行動を前提としていると述べた(ディーイ,2011)。デューイによれば、何かが習慣的になって初めて、それに影響を与える可能性が出て来る。たとえば子供がピアノを習うとき、すぐに鍵盤をデタラメに叩いて音楽を創り出す。音符の並びがメロディーとなり、音符の組がコードになることを理解するまで、本当の意味でピアノが弾けるようにはならない。彼女がもし、より大きなシステムのなかで習慣を捉え直す機会をもたなければ、理解を伴わない習慣の繰り返しで、成長の可能性なく単に同じ行動を繰り返す状態に陥る危険性がある。習慣をシステムのなかで捉え直すことが出来ると、習慣は別の習慣や新しいシステムを生み出すことが出来るようになる。 市民としての習慣とは、投票からゴミの報告、近所の高齢者の安否確認まで、公立の機関やコミュニティーに対して市民が取る行動の全てである。市民としての習慣は、正規のシステムやプロセスから作り出される。同時に市民としての習慣は、自発的なグループやネットワークから非公式にも作り出される。このような「習慣の集まり」によく欠けるのが、理解する機会である。政府が作るプロセスやシステムが、習慣を育てたり、それを理解する機会を与えることに失敗することが多いことは、驚くには値しない。単に利用するための壁が高すぎ、生産的な習慣を作り出す体制を組むのを難くしていることは、政府ではよくあることだ。オープンシビックデータの文化が政府のプロセスと関連するに従って、市民としての習慣のためのシステムデザイナとしての役割を、政府が満足する例が出てきている。 そのような例の1つが急成長しているCRMシステムの領域だ。米国の大きな都市には、道路の穴から折れた木の枝や落書きといった問題を市民が報告するための、なんらかのシステムが整備されている。このようなシステムは何度か大きく改良が成されている。従来の電話によるホットライン(CRM 1.0)からモバイルアプリケーションやインターラクティブなウェブページ(CRM 2.0)、そして深い理解という文脈のなかでインターラクティブな枠組みをもつモバイルやウェブツール(CRM 3.0)といった流れだ(図1参照)。後述するように、このようなシステムは世代が進むに従って、オープンデータの文化の影響をより多く受けている。1.0から3.0の変化は、市民が新しい行動や新しい習慣を起こし、市民としての生活に対する新しい理解を深めるためのシステムで、習慣を文脈付けする流れを反映している。 市民としての習慣とCRM CRM システムは、顧客中心あるいは市民中心の政府に重点を置いた新公共管理(ニュー・パブリック・マネージメント)のアプローチの一部として当初開発されたが、シビック・データの提供元として、またシビック・データを公表するためのツールとして、オープン・データ・ムーブメントにも深く関連している。ここ数年間に政府や非営利団体がいろいろなツールを開発した。そのようなツールは全て、ある程度公共の習慣を集め、整理し、公表する機能があるが、市民としての習慣を育てる度合いはツールによって大きく異なる。初期のCRMは習慣を可能とはしたが、それを推奨はしなかった。次の世代のCRMは、習慣の発達と認知を促進したが、習慣的な行動に必須以上のものである思慮深い習慣(reflective habbit)を考慮してデザインされていなかった。CRMツールが改良・追加されてきている現在、注目と継続的な取組みに値するよりよい思慮深い市民としての習慣を取り込んだ個々の例がある。 政府のデータに対する取組みに影響を与えたことは明らかだが、オープンデータ運動のCRMシステムに対する最初の大きな影響は、公民をオープンデータ文化に向かわせるのことにほとんど影響を与えなかった。報告という場面でモバイルアプリが中心的な役割を果たす前、電話によるホットライン(そしてその後に続くウェブポータル)が市民としての習慣に対する洞察を提供した。130以上の都市で稼働している、従来の電話による報告システムは依然として広く利用されており、効率という点から成功したシステムを考えられている。CRM1.0のツールは、分野に分類された報告内容に応じて、市民が情報を提供することを可能とする。市民は入力フォームに従って情報を入力したり、オペレータの情報を連絡する。このようなツールは市民が報告を効率よく、効果的に保存することをサポートするが、インターラクティブ性に欠ける。苦情の処理という点ではよく機能する。市民が直してほしいものがある、市民が報告する、政府が対応する。報告内容が、壊れた歩道、壁の落書きといった公の問題であるにも関わらず、ホットラインは習慣を個人的な行動の枠にいれる。市民は特定の限定された要求を解決する。要求を多くの要求のなかの1つとして捉えるように促されたり、同じコミュニティーのメンバでその要求が共有されることはない。 電話ベースだもインラインでも、オープンデータ運動はこのようツールに直接影響を与えた。例えばオープン311(Open311)運動は、市のデータが公開されていること、他の都市のデータや将来でてくるアプリケーションと統合可能とするための作法に従うことを市に推奨する。その結果、このようなシステムで集められたデータの非常に多くの部分が公開されている一方、市の行動からは遮断されている。有効なデータとして貢献する反面、熟考する習慣を育むための利用者へのフィードバックを提供していない。またそのような習慣がコミュニティーと都市の風景のなかでどこに収まるかを理解していない。 モバイルの報告アプリやウェブのツールは、以前の技術が提供した経験を模倣する以上のことが出来る。CRMシステムがモバイル対応しウェブの利点を享受するようになると、都市同士を横断して利用可能なツールが非政府系のグループによって開発された。このようシステムの例がシークリックフィックス(SeeClickFix)である。政府も同じように、NYC311、シカゴワークス(Chicago Works)、ボストン市のシチズンコネクト(Citizens Connect)といったツールを開発した。既存のオープンデータ運動に乗って、25,000以上の都市がシークリックフィックスを利用しており、32の都市がOpen311のオープンデータ標準に準拠したアプリを開発している。そのようなシステムはより多くの市民にデータを提供することができるが、より重要なことのは、それらのシステムが市民に自分たちのデータをより大きなコミュニティーのデータセットとの関係で示すことが出来ることである。このようなアプリでは、データはいつでも利用可能で、次の行動のための根拠として機能する。 ボストン市のシチズンコネクトから、CRM2.0システムが市民の行動を分類し公開する以上のことをすることが見て取れる。市民の行動を直に可視化し、お互いに関連付けることで公の知識(public knowledge)を創る。項目を埋める用紙フォーマットが示される代わりに、利用者は他の報告を最も最近のものとか、特定の地域のものといった条件を選んで見ることができる。シークリックフィックスは、特定の地域のシステムを利用することで、近所の人達の報告を見ることを可能とする。このようなマップは、市民としての習慣をまとめた足跡であり、利用者は自分自身の習慣を視覚化することや、コミュニティー全体の習慣を視覚化することが出来る。市民としての習慣の視覚化は、熟考する習慣に向けた第一歩となる。 このようなツールは広く成功例と考えられている。既存のアプリは、マサチューセッツ市のコモンウェルスコネクト(Commonweakth Connect)がボストン市のシチズンコネクトを利用して作られたように、いろいろな都市で機能するように作られている。そしてそのようなアプリの利用者は非常に多く、シークリックフィックスを利用した市民による報告は2013年5月に500,000件を達成した。このようなアプリで位置情報とカメラが簡単に利用できることが、報告をより簡単かつ正確にし、結果として政府の責任や対応の効率化が進んだ。そのようなツールは個人個人の行動を習慣的なおこないとし、そのようなおこないの影響範囲をまだそのような活動に関与していない市民にまで広げるようにうまく作られている。 一方、熟考の習慣を持たせることは非常に難しいことも分かった。このようなツールは、個人の市民としての習慣を、より大きな市政の活動のなかで提示することが出来るが、利用者がそのような提示に注意を払うことに常に成功しているとは言えない。ボストン市のシチズンコネクト利用者217名(全利用者の約41%)の調査によれば、マップに表示された最近の報告に興味がなかったり、他の報告を見ること自体をしないという傾向が顕われている。38%の利用者はモバイルアプリを利用して他の市民の報告をみることをしたことがなく、41%の利用者はこの機能をほとんど利用していない。9%を少し超える利用者だけが、この機能を常に利用していると答えている。熟考の可能性はツールの設計のなかに折り込まれているが、一般的な利用においては、このような行動への動機付けにはなっていないことが明らかである。 市民が協力し合い、市が問題を認識する前に解決するようなケースが例外的にはある。壁の修理や近所のゴミ箱をひっくり返し、死んでしまったかもしれないオポッサムを逃がすこと、しかしこれは一般的なことではない。CRMツールは、市民としての習慣に対する考えを育てるオープンシビックデータの新しい長所をまだ十分に取り込んではいない。このようなツールは、市民がそれぞれ行動から、実行可能な共通の理解を導き出す習慣に対する考えを育てる可能性をもっている。 市民生活での一人一人の役割を考えるだけではなく、実際にそれを必要なものとする環境を作るために、CRMツールは繰り返し修正され、設計が見直され、機能が拡張される必要がある。このような例として、シークリックフィックスの質問と回答機能や、ゲームの要素を取り入れた報告システムのシビックヒーローがある。このような例は前途有望ではあるが、十分に先まで行っているとは言えない。CRMシステムの利用方法は、習慣の考えのために本質的に最構成されなければならない。別の言い方をするなら、誰かが道のくぼみをシチズンコネクトで報告したら、その波紋はより大きな社会コンテキストにすぐに反映されなければならない。 複数のツールと接続することができるAPIとして作られたボストン市のシチズンコネクト、コモンウェルスコネクト、シークリックフィックス、そしてフォースクエア、ストリートクレッドはそのような例の1つだ。市民としての習慣を向上させるようにデザインされていて、ツールとのやり取りのなかの複数のポイントで、習慣に関する考えを表せるように工夫されている。ストリートクレッドでは、既にあるシチズンコネクトといったツールを使って特定の行動を取るように促され、バッジで表彰される。これがより大きな催しでの貢献と実世界での報償につながる。行動、バッジ、催しはすべて社会的な評価システムに貢献し、コミュニティーデータという視点で自分の貢献度を確認することにつながる。 このような介入の意味には3つの側面がある。1つめに、ストリートクレッドはその場限りの市民の関与を、より大きなゴールやコミュニティーや市が必要としている文脈のなかで示す。キャンペーンという取組みは本質的に、個々の活動を明確な目的に向けた明白な達成度で整理するものである。このような取組みは、市民が取らなかった行動ではあるものの、市民自身の興味に合致しているか、コミュニティーの大きな関心事に関連する行動を推奨することで、習慣に割り込み、習慣に対する考えという視点を補足するものである。2つめに、位置情報に基づいたツールとのやり取りによって、ストリートクレッドは地域、コミュニティー、市のレベルといった全体のなかで、彼らのとった行動がどのように貢献するかを利用者に気付かせる。キャンペーンは通常、特定の地域と関連付けられていて、地図ベースのインターフェース上に利用者の行動と実績は常に表示され、地元のコミュニティーでの個々人の行動を目立たせる。3つめに、システムと反対の考えとして市民の報告は市との個人的なやり取りとする考え方がある。ストリートクレッドは利用者に市民としての行動を、他の市民を一緒に、また比較しながら取ることを可能にする。公私の区別なく、いろいろなアグレゲータからのデータに接続するためのAPIを構築することで、ストリートクレッドはオープンデータは政府や行政が提供するプログラムに限られるものではないという事実を示している。 まとめ 市民生活は習慣の集まりだ。市民が参加する瞬間瞬間を、アクセスが可能で相互に利用可能な、そして可視化された方法で集めることで、オープンデータ運動はそのような習慣を市民が簡単に理解するための方法を提供し、簡単かつ柔軟に習慣を育てるための豊かな新しい機会に門戸を開いた。より多くののデータが集められ、また集めることが可能にあるに従って、習慣が形作られ、熟考されるシステムの開発やサポートをおこなうことは、政府の責任となる。 CRMシステムとシビックアプリの開発と改良が更に進めば、市民が行動をおこすことを簡単かつ継続可能とするためにアプリを設計するという、今の状況を超えていかなければならなくなる。市民としての習慣を熟考し、お互いに協力し、共同で参加するためのデザインの選択肢が一般的になる。ツールは、市民の経験を改善、深化させるようにデザインされるだけではなく、改良の繰り返しによって、市政の領域を超えるより堅牢なオープンデータの文化を開発するための土台となる。 ### 著者について Eric Gordon studies civic media, location-based media, and serious games. He is a fellow at the Berkman Center for Internet and Society at Harvard University and an associate professor in the department of Visual and Media Arts at Emerson College where he is the founding director of the Engagement Game Lab (http://engagementgamelab.org), which focuses on the design and research of digital games that foster civic engagement. He is the co-author of Net Locality: Why Location Matters in a Networked World (Blackwell Publishing, 2011) and The Urban Spectator: American Concept Cities From Kodak to Google (Dartmouth, 2010). Jessica Baldwin-Philippi is a visiting assistant professor of civic media at Emerson College and a researcher in the Engagement Game Lab. Her work focuses on how engagement with new technologies can restructure forms of political participation and ideas about citizenship, and has covered a variety of political contexts, from political campaigns’ use of social media, to games designed to increase participation, to tools that can mediate relationships between citizens and governmental institutions. 参考資料 * Dewey, J. (2011). Democracy and Education. New York: Simon and Brown. * James, W. (1925). Talks to Teachers on Psychology; And to Students On Some of Life’s Ideals. New York: Henry Holt and Company. * Pew Research Center/Washington Post (2013). “Public Says Investigate Terrorism, Even If It Intrudes on Privacy: Majority Views NSA Phone Tracking as Acceptable Anti-Terror Tactic.” Retrieved from http://www.people-press.org/files/legacy-pdf/06-10-13%20PRC%20WP%20Surveillance%20Release.pdf 



(翻訳:大條成人)

2_10_Opendata_Standard_GTFS

2_9_Oakland_Open_City

2_8_Jounalist_Take

2_7_HackingFOIA

2_6_Civic_Entrepreners

1_5_Asheville_Open_Data

1_4_London_Data_Store

1_3_Smarter_Chicago

1_2_Opendata_Chicago

1_1_Boston_Public_School

第1章 ボストンの公立学校のオープンデータと開かれた論議  ジョエル・マホーニー 私は民衆を固く信じている。もし真実が与えられるのであれば、彼らはいかなる国家の危機に直面しても頼りにされる存在となるであろう。大事な点は、彼らに本当のことを伝えることだ。 ―エイブラハム・リンカーン 迷路の中で 2011年三月、ボストン市は問題を抱えていた。『ボストン・グローブ』紙は、「入学、ボストンにおける学校の割り当てという迷路の中」と題して、ボストンの学校割り当て政策の危機的な見解を提示したマルチメディアで展開しているシリーズの特別号をちょうど発行したばかりだった(Boston Globe, 2011)。そのレポートは、ボストンの公立学校に入学した十三組の家族の輪郭を描いており、彼らが学校の複雑な選択プロセスを切り抜ける際、彼らが感じた希望と失望をたどっている。家へ族のインタビューから引用した次の言葉が、それを示している。私は筋の通ったプロセスなどほとんど信じていない。だから私は、この混乱の中でも、どうにかして解決することをただ望むにすぎない。 ―マリア・グラント 学校において「宝くじ」という言葉は、ちょうど、子どもといっしょにサイコロを転がして目を狙い、あとは最善の結果を期待することなのだろうか?我々がいる状態は、ほとんどがそのようなものだ。 ―スティーヴ・ラッセル もし我々が望む方法で解決しないなら、最後には、都市を去ることもありうるであろう。 ―アンディ・ベルグ そのレポートは、学校の実績を示すデータと個人の物語が相互に影響する地図を用いて、学校を割り当てる政策がいかに複雑であるか、説得力のある図を描いていた。このことは、市民の満足感と政府への信頼に関して、掛け金が高いことをも表している。 このような不満は、学校の部局にとって初耳ではなかった。学校の割り当て政策の起源は、1965年の人種不均衡法にさかのぼり、ボストンの公立学校に強制的な統合を命じて、暴動と抵抗を町中に引き起こした。(Hoover institution、1998)。反対がとても執拗だったので、1971年の『タイム』誌の表紙になった。1974年に、地方裁判所は、ボストンの公立学校が憲法に違反して隔離されていたことが明らかになったという判決を下し、状況を改善させるために、市では生徒のバス通学輸送を強制した。問題が最終的に解決したのは、生徒のバス通学輸送が廃止された1988年になってからである。その頃までに、学区は十万から五万七千に縮小し、学生の28%が白人だった(Hoover institution、1998)。 物流の問題―数多くの学生を限られた数の学校に配分すること―のようにみえることは、人種、平等、機会という、難解だが興味をそそられる社会問題に触れることになる。地区の統合を犠牲にしてまで、多様性を追い求めるべきだろうか?裕福な父兄ならまちを出て行くことができるのに、人種差別廃止を地元レベルで施行するべきだろうか? 都市は適切なバランスを決定する責任を負うべきか?1954年のブラウン対教育委員会裁判で、最高裁判所の画期的な判決文によって示されたように、これらの疑問は、長くて異論の多い歴史があった。子どもを学校に送るための簡単な法令は、社会の分裂を起こすような最たる問題を含んでいるのである。 『ボストン・グローブ』紙は、2011年のレポートで学校の割り当て問題を強調表示することによって、長く続いた問題を公の注目に回復した。そのレポートは、市役所での談話はハイレベルな議論に火花を散らすことになり、学校の部局にとって問題を無視することは困難となった。 批判は、応答することを要求した。 Code for America が進行中 Code for Americaが進行中 2011年一月、ボストンで Code for America が市と十一ヶ月の契約ではじまった。私は公教育を中心に画期的なアプリケーションを構築すべく集まった五人組のフェローの一人であり、The Mayor's Office of New Urban Mechanics とボストン公立学校と提携した。我々の目的は、チームメイトのスコット・シルバーマンの言葉を引用するなら、教育サービスを、簡単で、美しく、利用を簡単にすることである。 私たちの主要なプロジェクトは、学生情報に加えて、革新的なサービス―学生向けの App Store のような―を築くことを開発者に認める「信頼できる枠組み(トラスト・フレームワーク)」である。3 月にグローブ紙の記事が出る頃までには、しかしながら、このプロジェクトの実行可能性は疑わしかった。ボストンの公立学校の弁護士はデータを開示することの実現性に対して慎重なスタンスをとっていた。そこで我々はオープンデータとはあまり関係のない他のプロジェクトに焦点を移した。 しかしながら、グローブ紙のレポートが発行された後に我々が感じたのは、オープンデータにかんするデリケートな話題を取り巻きながら、市とともに進歩する機会であるということである。教育長は学校の部局と初期に行ったミーティングで、学校の発見するプロセスの間ずっと父兄の役に立つアプリケーションの構築を提案した。特に現在使えるツール―父兄が使う二十八ページもの冊子、「私の学校は何?」(“What Are My School”)と呼ばれる地元で作られたボストン公立学校のウェブサイト―がもっと望まれている状況を考慮にするなら、我々はそのプロジェクトが的確なルールを明らかにする絶好の機会であると理解した。2011年7月、我々は、父兄が家の住所と評価レベルを入力すれば、個別に的確な学校のリストを調べるのを許可するプロジェクトに着手した。我々はそれを“DiscoverBPS”と呼んだ。 我々の研究は、父兄の基本的な関心が学校の質と学校の位置の二つであることを示した。これらの関心を扱うために、我々は、通学距離と時間(徒歩とバス)の詳細な情報はもちろん、マサチューセッツ総合評価試験、教師と生徒の比率、授業時間、放課後のプログラム、そのほか、実績の測定法などを含めた。我々は、徒歩区域の複雑な政策(学校の半径以内に住む学生に大きな優位を与えるもの)について父兄が理解するのを助けるために「徒歩圏マッ プ」を作った。それから、各学校、各学年における歴史的な合格率を付け加えた。後者の統計値は最も物議を醸すこととなった。学校の部局は、入学倍率が「子どもの将来を賭とする」意味を付け加えることを心配した。我々が立ち向かったのは、父兄が適切な情報抜きに十分な情報を得たうえでの決定をすることなど不可能であり、透明なデータがくじ引きのプロセスをよりいっそう広汎なものにしてしまうことに対してである。我々が公のデーターを公表する許可を得た後でさえも、学校の部局は、「入学の見込み」という語句が扇動的であるとして、我々に統計値を「一席あたりの応募数」(このことは、百分率の代わりに、比で数値を表さなければならないことを意味した)と呼ぶように要求した。 明らかに、「オープンデータ」はグレーに変化した。 DiscoverBPS は2011年11月に開始して以来、一万五千人以上のユニーク・ビジターを得てきた。学校登録月間にはトラフィックが大幅に増大した。前後関係から、ボストンにいるほぼ同数の人数が登録したことになる。DiscoverBPS は父兄と学校関係者から称賛を得た。彼らは、直感的なユーザーインターフェイスとデータ駆動型のコンテンツが、複雑な学校選択プロセスがわかりやすくなったのを感じた。しかしながら、最も重要なフィードバックを得たのは、一 年半後であった。教育長のキャロル・ジョンソンは、DiscoverBPS が「学校の部局が父兄と関わる方法を変化させた」と私に言ったことである。Code for America のゴール―政府のサービスを、よりオープンに、効率よく、個人参加方式にすることによって、市民の関与をよりよいものにする―についてじっくり考えた時には、私はこんなにも強烈な賞賛を得るなどと考えることはできなかったものだ。 アルゴリズム規制 アルゴリズム規制 教育長が述べた意見の背景を記すことは重要である。私が彼女に会ったのは、2013年二月、ボストンの公立学校の関係者がボストンの学校の割り当て政策を徹底的に見直す提案を披露したタウンミーティングである。これらの案は、長年議論のトピックになっていたが、ようやく現実味を帯びてきたのは、2012年1月にメニーノ市長が「State of the City」のスピーチで、問題を解決すると公約した後である。 「ボストンの公立学校は、去る二十年の間にはるかに良くなりました。私が市長になったとき、父兄の多くは、子どもを学校に送りだすのに、わずか一握りの学校しかない、と考えていました。今日では、百以上もの学校がキャンセル待ちの名簿を所有しています。なぜなら、公立の学校は父兄にとても人気が高いからです。学校での卒業率はずっと決して高くなることはありませんでした。そして、この二十年で、中退率が低くなることはありませんでした。 しかし、次のレベルにシステムを移行させるためには、何かが邪魔になって立ちはだかっています。それは、市のいたるところにある学校に子どもを送り出すという、学校の割り当てプロセスです。どこの通りでも選び取ってみてください。子どもたち十人程度は、みな違う学校に通っています。親はお互いに知り合いではないでしょう。子どもも一緒に遊ぶことはないでしょう。彼らは自動車を相乗りすることができません。同じテストのために一緒に勉強をすることもできないのです。われわれは、子どもたちに役に立つ学校のコミュニティーを作ってはじめて、子どもたちを価値あるものにするのです。 今夜私は、今から一年の間に、ボストンは根本的に異なる学生割り当てプラン―家から近い学校に通っている子どもを優先する―を採用することになっている、と公約します。私は、市全域から献身的な人たちで構成されたグループを任命するようジョンソン教育長に指示しています。彼らはプランの設計を手伝い、我々を運び、移行したコミュニティーに参加するでしょう。 私は、以前にも学生の割り当て案を変更することについて話したことがあることは認めます。私たちは長年にわたって数多くの改善点を作ってきました。2012年はこの仕事を終える年となることでありましょう」。(City of Boston、2012) この指令は、翌年に向けて、学校の部局の基本方針のレイアウトであり、私が2月に出席したタウンミーティングの内容を含んでいる。そのタウンミーティングでは、ボストンの公立学校の関係者が新しい割り当て案を提示し、父兄に感想をせがんだ。これらの提案の大部分は、校区をより小さい割り当て区域(http://bostonschoolchoice.org/explore-the-proposals/original-bps-proposals/を見よ)に分割することで、バス通学輸送問題の解決を狙った。ボストンは伝統的に三つのゾーンからなる。北、西、東である。新しい提案は、九から二十三のゾーンに渡っていた。再区画のいかなる労力と同様、境界線を引き直すのに容易な方法は全くない。学校の数が同じままであるなら、ある父兄やグループは、いつも不当な扱いを受けている感じがするであろう。ミーティングはけんか腰だった。父兄は、現在の割り当てプロセスにも、提案された割り当てプロセスにも不満を漏らした。そして、教育長のコメントが敬意を表した言葉であっても、私が市役所の会議で座っていた時に、父兄の長い列が不満を漏らすような場所で、学校の選択プロセスについて、DiscoverBPS のようなウェブサイトが、このような深くて手に負えない問題に、本当に影響を与えることができると信じるのは、とても困難だった。 面白いことに、勝利を得た案は、学校の部局のもともとのリストにはなかった。案はペン・シーによって提出された。彼は博士号を有するマサチューセッツ工科大学の学生で、社会問題を扱うためにアルゴリズムを使う研究をしており、好奇心からタウンミーティングに出席していたのだった。我々と同様に、彼が出した結論は、学校の質と位置をめぐって展開している問題が、地理的に固定された区域によって不当に対処されているのは確かであろう、というものだった。彼の解決策は、学生がまちのどこに住んでいても確実に質が高く数が保証されている選択(テストの得点や他の指標を使って学校の部局によって定義されている)を利用できるアゴリズムを使った。この問題について『ニューヨーク・タイムズ』紙のキャサリン・シーリーの記事によれば、以下である。「彼は次のように言いはじめた。『私が聞いていたのは、親は(学校に)家に近いことを望んでいるが、本当に気に掛けているのは(学校の)質についてある・・・私はこの二つの目的を合わせようとするために取り組んでいる』。彼に政治的な意図はなかった」。 ペンは学校の部局に自分が作ったアルゴリズムを提案した。学校の部局は手続きにペンのアルゴリズムを含めた。父兄はそのアイデアを受け入れ、最後には、教育委員会は2013年三月の政策で、ペンのアルゴリズム案に投票した。(そのアルゴリズムは2013年の終わりに施行される)。その決議は、五十年間の議論の中で歴史的な発展だった。 シーリーの記事はこう記している。 「コーディングのスキルを持っていても、モデルを公式化するのに全く政治的な意図のない冷静なよそ者が事態を引き受けたことが、都会の学校区で今日に直面している複雑さを測る尺度である。ボストンと同じく、数多くの地区では、良質の学校があまりにも少なく、有色人種の子どもたちの大部分は成績の低い学校に閉じ込められるなど、不平等を抱えている。その遺物を克服することは、感情的に激しく非難されてきたので、区域の線を引き直そうとする一昔前の努力は失敗した。(2005年に管轄区域はアルゴリズムを変更したが、以前は生徒の割り当てに使っていた)」。 (Seelye, 2003) この記述は、Code for America のフェローとしてボストンで行っている我々の仕事にぴったりそのまま当てはまるだろう。 データと論議 ボストンの学校の割り当てをめぐる物語は、社会問題周辺をめぐる公の論説を変えてしまうほどのオープン・データの威力を示している。『ボストン・グローブ紙』は、(父兄のインタビュー、その他とともに)学校の部局が公然と利用できるようにしてデータを使っていると、学校の部局に対して主張している。学校の部局側は、DiscoverBPS に新しいデータを開放し、提案された解決方法をめぐって、父兄たちをオープンな対話に引き込むことによって応答した。このプロセスは、タウンミーティングやセクション全体が忠実な「生のデータ」を有する www.bostonschoolchoice.org と呼ばれるウェブサイトを巻き込んだ。Mayor's Office of New Urban Mechanism の共同司会を務めるクリス・オスグッドが記したように、このデータはペン・シーのような第三者がこのプロセスで学識のある貢献をしたと認めた。オープンデータは、学校選択のデータベースにおいて、一種の API(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)の終点として、役に立ったのである。 DiscoverBPS は「学校の部局が父兄と関わる方法」を変えたとする教育長のコメントは、(DiscoverBPS のような) データを公開するための使いやすいインターフェイスが、議論を促す際に果たす決定的な役割を反映している。学校の部局が父兄と関わる方法を変えることによって、DiscoverBPS は、学校の部局内で技術の役割―と価値―についての態度も変えた。DiscoverBPS のヴァージョン1.0の成功に基づいて、父兄のために新しいデータとツールを含むソフトウェアのヴァージョン2.0を開発するために、市は近頃私をつなぎ止めた。私は2011年にはじまったボストン公立学校での会談を現在も続けており、オープンデータを使うことはもちろん、オープンデータを可能にするツールや技術(ボストンの公立学校の IT 部門は、現在、学校と生徒の情報をカノニカル・レポジトリにさらす RESTful API を構築している)に対する大きな寛容に気がついた。最後に、コンピューターだけで割り当て政策を管理するという、学校の部局がとった選択は、技術的な解決を包含する方向に向かう大いに象徴的な歩みであることに私は心が打たれた。―アルゴリズムが各住所で唯一的確な学校のリストを生み出して以来、学校の部局が、もはや、割り当てゾーンの地図を壁にピンで留めることがないという意味を考慮しよう。 結論 ボストンでの我々の仕事は、大いに議論を引き起こすような社会的な問題をめぐっても、オープンデータがどのような触媒変化作用を及ぼすかを示した。最初は、我々は app store で全ての学生の情報を直接公開することで変化に影響を及ぼすことを試みたが、しかし、プライバシーの問題を中心として抵抗に遭い、迂回したアプローチを取らなければならなかった。現実で既存の問題をオープンデータに適用する代わりに、我々はデータの即効的な価値を証明し、そして、長年にわたる公のデータベースに意味深い貢献をすることができた。 二年半後、学校の部局は DiscoverBPS の開発に継続して投資する予定であり、オープンデータがガバナンスで果たすことができる役割の深い理解を証明している。 民主主義は、社会にかんする幅広いゴールを取り巻く形で、政策―と法規―を作成することができる我々の能力を頼みとしている。オープンデータはこのプロセスにおいて、建設的な社会議論を促進し、目標達成の透明な指標を証明することによって、重要な役割を果たしている。実際、エイブラハム・リンカーンが記しているように「真事」があれば、最も困難でやりがいのある社会問題にさえも、立ち向かうことができるのである。 著者について ジョエル・マホーニーは、起業家。Code for America の元フェロー。ボストンの父兄に子どもたちが最も良い公立学校を見つけるのを手助けする DiscoverBPS.org の考案者。企業家にビジネス許可をうまく誘導する OpenCounter.us の共同創設者。DataDonor.org における彼の仕事は、慈善寄付の新しいメディアとして個人情報の利用を調査することである。 参考 Boston Globe Staff (2011).Getting In: Inside Boston's School Assignement Maze〔Multimedia series〕.The Boston Globe. http://www.boston.com/news/education/specials/school_change/index からの引用。 City of Boston.(2012). The Honorable Mayor Thomas M. Menino: State of the City Address, January17,2012.http://www.cityofboston.gov/Images_Documents/State_of_the_City_2012_tcm3-30137/pdf からの引用。 Hoover Institution, Standord University(1998).Busing's Boston Massacre.Policy Review,98. http://www.hoover.org/publications/policy-review/article/7768 からの引用。 Seelye, Katherine Q. (2013, March 12). No Division Reguired in This School Problem. The New York Times. http:// www.nytimes.com/2013/03/13/education/no-division-reguired-in-this-schoolproblem.html?_r=0 からの引用。

翻訳:柴田重臣

0_Preface

     ブレッド・ゴールドステイン
     前チーフ・データ・オフィサー
     シカゴ市
     photo_url: /images/authors/brett.png
     twitter: bjgol  
     著者について:シカゴ市チーフ・データ・オフィサーを経て現在はシカゴ大学ハリス公共政策大学院アーバンサイエンスフェロー

permalink: /preface/
---

公共的なセクターにおけるオープン・データの盛り上がりはイノベーションを生み出し、効率化が推進され、経済発展ももたらした。Data.govやホワイトハウスのオープン・ガバメント・イニシアティブなど注目を浴びる連邦政府のイニシアティブだけでなく、各地方政府レベルにおいても、チーフ・データ・オフィサーの任命、オープン・データ・ポリシーやオープンデータ・ポリシーの採択などの新しい取り組みを始めている。

端緒についたばかりではあるが、私たちは将来の都市を形成する際にオープン・データが果たす変革可能性の証拠を目にしつつある。きれいな公園をもたらしたり、犯罪と闘ったり、許可を発行することで新しいビジネスを始めたり、そういった市民の生活に政府が直接インパクトを与えているのは市のレベルで起きているのだ。地方都市こそが、オープン・データを活用することで市民と政府との関係性を再考する最大の機会がある場所となっているのだ。

機運が高まり、社会規範も整う中で、私たちはムーブメントの軌道における重要なターニングポイントを迎えることになる。私たちはコミュニティとして思慮深く、注意深く、順応性を持つことが求められている。私たちは今後意義のある、持続可能な成果に辿り着くために、今までに何がうまくいき、今後何を学ぶ必要があるかを確認し、振り返る必要があるのだ。

『Beyond Transparency(透明性を超えて(仮))』は、領域横断的なオープン・データの展望についての研究であり、様々な分野の実践者がオープン・データに取り組むことで成し遂げた成果についての経験を共有している。それは透明性のための透明というレトリックを超え、実際の行動や問題解決に繋がることを目指している。オープン・データが原動力となる変革のエコシステムは、より効果的な意思決定やより効率的なサービス提供を可能にし、それは経済活動を刺激し、市民が自分たちのコミュニティでアクティブな役割を果たすことを力づける。私たちは様々な事例やストーリーを通じ、変革のエコシステム構築のために何が必要かを探求する。 

本書執筆までの経緯

本書執筆のきっかけは私がシカゴ市のチーフ・インフォーメーション・オフィサーとして勤務していた時に遡ります。当時私はシカゴ市のオープンデータを活用した「成功物語」をいかに他の都市で再現することが出来るかについて大量の問い合わせを受けていたのです。ある特定のベンダープラットフォームを活用した運用事例についてはいくつかのエッセイが書かれていました。それは価値あるものでしたが、私は更に広義なアプローチが必要であると感じていました。そしてよりそのことを考えているうちに、今こそがオープン・シビック・データなどについての成功や学び得た教訓を記録するガイドブックのようなものが必要なときなのではないか、と思うようになりました。

2012年、コード・フォー・アメリカのシカゴ市でのフェローシップ・プログラムを通じてコード・フォー・アメリカの創業者のジェニファー・パルカ氏と知り合いました。その後も彼女とはシカゴ市におけるコード・フォー・アメリカの仕事に関する意見交換を通じ信頼に足る関係を築くことができましたし、オープンガバメントやシビックイノベーションに関する一連のカンファレンスやミーティングで継続的に顔を合わせる機会がありました。私がシビックオープンデータについてのマイルストーンについてのアイディアを一歩進めようと考えていた時、協力者として彼女のことがすぐに頭に浮かびました。

私は大きなアイディアを持って「オープンデータついての本を書こう」とジェンに連絡をしました。互いに忙しい二人にとってそれは困難な仕事のように思えましたが、データに関する業界の主要な人物、そしてコード・フォー・アメリカのリソースを活用するというプランに至りました。ジェンは非常に乗り気で、このプロジェクトをサポートするためにコード・フォー・アメリカのチームを集めてくれました。それから数ヶ月の間には各チャプターのドラフトが出来上がり、書籍のアウトラインが仕上がってました。素晴らしいアイディアが迅速な実行力と組み合わされ、多くの点においてこの本が作られたことそのものがオープンデータムーブメントの原則を体現していたと言えます。

この本が求めること

『透明性を超えて』は、市町村レベルのチーフ・インフォメーション・オフィサー、コミュニティオーガナイザー、市民的なマインドを持った起業家に至るまで、政府の内外における実践者のためのリソース・資料であり、また彼らによって作成されたものです。私たちはこの本を通じていくつかの具体的なことの実現を目指します。

地方の政府機関でオープンデータプログラムを始めたい場合は、ここで描かれている教訓によりまさしく同じことを実践していただく一助となることを希望します。

オープンデータが今後どこに向かうかについて、また私たち実践者がいかに賢く、効果的、広くインパクトを与えられるようになるかについて、ディスカッションを引き起こしたいのです。

私たちはそれが技術者であれ、そうでなくとも、政府機関の外部のコミュニティメンバーのコミュニティを支援し、統治プロセスを改善し、公的機関を改善したいのです。

そしてオープンデータ・コミュニティの様々な活動の発信力を高めたいのです。本書では公務員、コミュニティ・オーガナイザー、NGO団体、技術者、デザイナー、リサーチャー、ジャーナリスト、市民に至まで、オープンデータのエコシステムを構成する多様な実践者の視点に触れることができます。「Beyond Transparency」の中では、様々な分野を横断して活躍する第一線のイノベーターやリーダーのストーリーをまとめました。オープンデータを活用することでいかにこれまでに成果をあげたか、そのプロセスでどんな学びを得たか、そしてそれらの教訓を適用することでいかにアメリカの各都市の有望な未来を実現することが出来るかについて学ぶことができます。彼らが今までに達成したこと、未達成のことを振り返ることで、彼らの物語を通じて思いがけない新しいテーマについての共感を呼び起こすことでしょう。

本書のタイトルが示すとおり、私たちのコミュニティは単なる透明性の原則を超え、オープンデータの取り組みを政策目標と連携させ、本当に大切な問題解決し、限られたリソースを適正配分するためのよりよい判断のために活用すべきであることを認識しつつあります。私たちは繰り返し市民中心のデザインの必要性を耳にしますが、それらはユーザー・エクスペリエンス分野で見られる、単に「オープン」なものから本当の意味で使えるものであり公的にアクセス可能なデータへ移行する原理を当てはめるものです。多くの実践者はあらゆるタイプの市民データにおけるオープンデータ・スタンダードの必要性を引用しますが、それは相互運用性を増し、インパクトをより規模の大きなものにすることが出来るからです。これらは本書に集められたストーリーから導きだされるアイディアや教訓の単なる一部です。

未来を見渡すと現在はとても刺激的な時代といえます。私たちはオープンデータの価値を証明することができましたし、シカゴからノースカロライナのアシュビルなど、あらゆる規模の都市で短期間のうちに実現可能であることを示しました。そして今、これまでに始められた仕事を続けていくのは私たち全ての肩にかかっています。

謝辞

私が山のようなプロジェクトを続けるにあたり、妻のサラの寛容さは素晴らしいものでここに感謝します。コード・フォー・アメリカのローラ・ダイソン氏とその他のメンバーには本書執筆の着想を実現させてくれたことに感謝します。シカゴ市におけるオープンデータの取り組みを今日の姿にするため支援をしてくれたラーム・エマニュエルシカゴ市長にも感謝します。そして何より、本書の中で取り上げられている取り組みの当事者である実践者のコミュニティに感謝します。あなたたちの創意、努力、イノベーションに対するコミットメントがあったからこそ、オープンデータにより力を得た、より強い公的な領域への路が照らし出されるのです

翻訳:市川裕康